SORRISO【江口拓也】

第三十九話 ページ39

緊張しすぎてじっとしていられなくて
約束の時間にはまだ早いけど
歩いて気持ちを落ち着けようと家を出た。



ゆっくり歩いて緊張解すけど
ほとんど効果はなくて
約束より30分も早く
待ち合わせ場所の駅前の広場についた。



拓也さんが来るまでに
この緊張を何とかしなきゃ。



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「あれ？A？」



振り返ると
帽子とマスクをつけた拓也さんが立っていた。




『え？なんで？
待ち合わせは30分後ですよね？』



「仕事が思ったより早く終わったんだ。
それでじっとしてられなくて…
Aも早いね」



久しぶりに会った拓也さんは
相変わらずおしゃれで
素敵な笑顔で
緊張がまたぶり返してきた。



「ちょっと早いけど行こうか」




そう言って拓也さんは
お店までエスコートしてくれる。



お礼がしたかったのに
またいつものように拓也さんが
お店を決めて予約までしてくれていた。




ついた先はおしゃれなレストランで
予約した時間より早かったけど
快く迎え入れてくれた。



料理はどれもおいしかったけど
私は緊張しすぎてそれどころではなかった。




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・




いつ言おう。
やっぱり食べ終わってからのほうがいいかな。



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・




そんなことを考えているうちに
いつの間にかデザートまで食べ終わってしまった。




言うなら今しかない。





『あのっ、拓也さん』



私が思いを告げようとした時だった。





「待って。言わないで」



拓也さんは少し身を乗り出して
人差し指で私の唇を遮った。




「食べ終わったら少しドライブしない？
この近くに車止めてるから」



私が驚いて話せなくなっているのをいいことに
拓也さんは話を進めて
成り行きでドライブに行くことになった。




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お会計のときにお礼がしたいから
私が払うと言い張ったけど
拓也さんは頑なで
結局いつものように奢られてしまった。




拓也さんの言った通り
レストランから徒歩数分のところに
車が止められていて
拓也さんが助手席のドアを開けてくれた。



お礼を言って乗り込むと
行き先も教えてくれないまま
車はどんどん進んでいった。




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ついたのは見晴らしのいい岡の上で
東京にこんなところがあったことを
私は上京してから初めて知った。

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