第三十話 ページ30
突然聞こえたドスの効いた声に
男が怯んで私を掴んでいた手を離した。
誰から見ても怒った顔をしている拓也さんは
その身長と相まって
普段の様子からは想像もつかない
威圧感を醸し出していた。
それでもなにか訳の分からないことを叫ぶ男から優しく私を引き離すと
庇うように私を背中の後ろに隠す。
その大きな背中を見て私の
恐怖がどれだけ和らいだことだろう。
騒ぎを聞きつけた近所の人が
警察を呼んでくれていたみたいで
程なく到着した警官がまだなにか叫びつづける男を拘束した。
極度の恐怖から解放されて
地面に座り込む私を
拓也さんが壊れ物でも扱うかのように
優しく抱きしめてくれた。
「もう大丈夫だから」
さっきとは全く別人の
優しい声色と体温が私の心を安心させる。
・
・
後から駆けつけたパトカーに乗って
警察から事情を聞かれている間も
拓也さんは隣にいてくれて
私が泣きそうになると手を握ってくれた。
拓也さんは一言も発しないけど
そばに居るんだと
安心しても良いんだよと
言ってくれている気がして
心の底から安心できた。
・
・
警察の人から色々聞かれたけど
大したことは答えられなかった。
もうすっかり遅くなってしまったので
話は後日改めてということになった。
突然の事で混乱していた私にはありがたかった。
冷静になろうと頑張っても
なかなか心はついて行かなくて
相手が警察の監視下にあると頭ではわかるけど
時折思い出したように体が震えた。
そんな私を気遣って
拓也さんは普段とは違って
人通りの多い明るい道を
いつも以上にゆっくり歩いてくれた。
視線を上げると目が合って
気遣わしげな優しい瞳で微笑まれる。
・
・
いつも以上に時間をかけて
ようやくマンションの前にたどり着く。
お礼を言って別れなきゃ。
もう充分迷惑をかけたんだから。
不安で泣き出しそうなのをぐっと堪えて
口を開こうとした。
「あのさ…」
先に声を出したのは
困ったような顔の拓也さんの方だった。
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ちぃちゃん - すごく素敵なお話でキュンキュンしました・・! (2020年5月7日 10時) (レス) id: d5505982b6 (このIDを非表示/違反報告)
みみみ - とっても面白くてドキドキしました!最高です!!作品名を見た瞬間、「あ、私これ好きww」ってすぐに気に入っちゃいましましたww (2017年7月2日 9時) (レス) id: 246cbbf759 (このIDを非表示/違反報告)
春菜(プロフ) - お疲れ様です!やっぱり、最高のお話でした!!最終話なんて、心臓が持たなかったですwこんなの初めて!!これからも頑張ってください!また読みます! (2017年7月2日 9時) (レス) id: cc7bae8682 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ。(プロフ) - お疲れ様でした!通知来た瞬間読みました!素敵な小説ありがとうございました。これからの作品も楽しみにしています! (2017年7月1日 23時) (レス) id: d39a9d04da (このIDを非表示/違反報告)
flower(プロフ) - コメントありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです!頑張ります! (2017年6月29日 23時) (レス) id: 1b5420c9a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:flower | 作成日時:2017年6月15日 19時