SORRISO【江口拓也】

第二十五話 ページ25

SIDE EGUCHI


朝、電話の鳴る音で目を覚ます。


着信はマネージャーからで
何事かと慌てて電話を取る。


「おはようございます、江口さん
今日のスケジュールのことなんですけど…」



確か今日は朝からアフレコが一本
午後も雑誌の撮影が入っていたはず。



「午後からの撮影が先方の都合で延期になりました」



寝ぼけた頭でお礼を言って電話を切る。



これはチャンスだ。
しばらく髪を切っていなかったし
何より昨日のAの様子が気になった。




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午前中のアフレコを終えて
美容室に電話を掛ける。




いつもならAが電話番をしているんだけど
今日は店長さんが電話に出た。




「あ、もしもし、江口です。
高橋さんにカットをお願いしたいんですけど…」




「残念ながら高橋は本日休みでして…」




店長の話によると彼女は
今までほとんど仕事を休んだことがなく
店のみんなも心配しているようだった。



「高橋が何か困っているようだったら相談に乗ってあげてほしい」



予約するのをやめた俺に
気を悪くするでもなく
真剣な声色でお願いをされた。


店の人たちも彼女の様子を見て
心配していたらしい。




俺は電話を切ると
すぐに彼女の番号にコールした。


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電話に出たAは
気丈にふるまってはいたけど
明らかにいつもとは様子が違っていた。



それでも俺には迷惑をかけたくないらしく
バレバレの嘘をついてごまかしていた。



言葉にされなくたってわかる。

伊達に10年近く声の仕事を続けてきたわけじゃない。




大丈夫と言って笑う彼女の声は
他の人にはわからないかもしれないけど
微かに震えていたから。



俺はそれに気づかないふりをして
今度会う約束を取り付けた。



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電話を切るとすぐにLINEを開く。


本当はこんなこと頼みたくないんだけど…

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