なずなくん ページ18
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バス停から少し歩いたところ。
「はぁ…本当に全然待ってくれないから不安になった……」
肩で息をしているから、相当走って追いかけてきたのだろう。
息をしづらくなったのか、その男はマスクを外し、サングラスも外した。
『あ』
間抜けな声がAから聞こえる。
「おれはRabbit*sの仁兎なずな!…Aたちがドームに来てたのに出てったって聞いて、追いかけてきた!
実は前々からAに話したいことがあってな。だから、LIVEが終わるまでドームの部屋で待っててほしいんら!」
なずなは、にひひと笑うと「おねがい!」といたずらにAの手を握る。
「ねえ、待って!あれ、なずなくんじゃない!」
いつの間にか、Aたちはドームの目の前に来ていたようで、なずなを見つけたファンが指差して大声を出す。
それを聞いて、他のファンの目線もそちらに行く。
「本当だ!」
「なんでこんなとこに?」
「ってか、横にいる女たちだれ??」
などと、色とりどりのことを言われている。
なずなはその様子に気づくと、Aとサクラの手を掴んで走り出す。
…
ドーム、Rabbit*sの楽屋。
「はぁはぁ」
なずなはソファーに寝転がっている。
『つか…れた』
Aは頬に手を当て、深呼吸をする。
「全く…何やの…」
サクラは手を見上げて溜息を吐く。
その様子を、友也、光、創が不思議そうに眺める。
「に〜ちゃんはともかく……Aともう1人はなんで?」
友也が面倒臭そうにそんなことを言う。
「どうしても、Aに話したいことがあったんら……」
死にそうな声を出しながら、なずなはそう言う。
ドアが大きく開く。
「ちょっとなずな先輩!なに勝手にやってるんですか!」
あんずがバインダーを腕に抱いて、楽屋に入ってくる。
「あんずか…?仕方無いらろ。急にAたちが帰りはじめて、それを追いかけてたら、ファンに追いかけられたんだから」
寝転がっている状態から起き上がり、ソファーに座ると、なずなはあんずにことの説明をし出した。
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作者名:梓詩織 | 作成日時:2022年10月12日 21時