目黒さんちのおとなりさんは料理がお好き

２．目黒さんとキーマカレー ページ5

「ん〜〜いい匂い」



フライパンの中には出来上がったばかりのキーマカレー。



ふつうのカレーライスも好きなんだけど、キーマカレーはカットした具材をぶち込んで炒めるだけだから楽でよく作っている料理のひとつ。



案の定、１人分どころか次の日も余裕でカレーですねってぐらいの量を作ってしまったけど、これは作りすぎても冷凍しておけばいつでも食べられるから問題ない。



「もうすぐご飯も炊けるし目玉焼きも作っちゃお」



小さめのフライパンを取り出して目玉焼きの準備をする。



冷蔵庫から欲張って少し大きめの卵を選んで割り、すぐにサッと水を入れて蓋をする。



カレーには半熟の目玉焼きが欠かせない。



「そろそろかな」



そっと蓋を開けてみれば黄身に薄く膜が張っていて急いで火を止める。


タイミング良く炊飯器が炊けた音にしゃもじを手にしたところでインターホンの音が部屋に響いた。



「こんな時に誰ですかぁ……ん？」



カメラを覗くと数日前に唐揚げを渡したお隣のお兄さん。


何だろうとマイクでちょっと待ってくださいと声を掛けて玄関へ急ぐ。


扉を開けるとペコリと頭を下げるお兄さんに私も頭を下げた。



目黒「すみません、タッパーを返したくて」



「あ、わざわざありがとうございます」



目黒「それと、これをお礼に」



そう言って渡して来たのは焼き菓子で有名なケーキ屋さんの紙袋。



「えっ、こんな物貰うような事してませんよ？！」


目黒「でもあの日めちゃくちゃお腹減ってて、本当に助かったんです。それに唐揚げもすごい美味かったし、お礼です」


「じゃあお言葉に甘えて、ありがたくいただきます」


目黒「じゃあ本当にありがとうございました」


「……あのっ！」



そう言って部屋へと戻っていく背中を呼び止める。



「カレー好きですか？」



一瞬、彼の喉がごくりと鳴ったような気がしたのは気のせいと思っておこう。

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