月花石色-366日短編小説- Second

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オーディション後、見事GENERATIONS候補生としての切符を手にした俺はこれで彼女に追いつくことができると思っていた。




そのはずだったのに…。









『元気でね』








彼女は、アメリカへと旅立ってしまった。






オーディションの話があったときと同じ頃
彼女に海外への話が出ていたんだとダンス教室の仲間から聞かされたのは
彼女が旅立って3日後のことだった。








彼女の実績が認められて海外のアーティストから直々にオファーがあったらしい。
期間は、未定。
しばらくは、そのダンサーの下で修業をしそこからの道は彼女次第。


つまり、彼女が海外での活動を決めれば日本には帰ってこないとのことだった。









…知らなかった。

彼女から何も聞かされず、彼女が旅立つ日にメールで知った。






ずっと追いかけていた光は、

やっと追いつくどころかさらなる先へと行ってしまった。









もう、届かない。


そんな絶望に似た感情で押しつぶされそうになった俺だけれど



GENERATIONSの強化合宿、夢者修行で詰め込まれたスケジュールで
感傷に浸る余裕もなく。



信頼し合える仲間と夢を掴むために我武者羅に走り続けた。









GENERATIONSとしてデビューして3年。
もう、彼女を追いかけるという思いはなく
でも、彼女のことを忘れることはなかった。



ふと、思い出すのは初恋の甘酸っぱい気持ち。






あれから、仕事でアメリカにも何度も行ったけど
俺は、彼女のその後を探そうとはしなかった…。









彼女なら大丈夫だと
どこかでそんな確信があった。




どんだけブラコンかと自分でも笑いそうになる…。







亜嵐くんたちには、GENERATIONS結成当初の親睦会で彼女のことは話していて
メンバーが海外へ行く度、探さなくていいのかと聞いてくれた時もあるけど

俺はそれを断った。









彼女に会うのはまだ先でいい。
もっと大きくなってからでいい。


そう思ったから。









-18時38分 羽田発 ニューヨーク行きのお客様は搭乗口まで…



遠くの方で鳴るアナウンスを聞いて俺達は立ち上がる。









もし次、彼女に会えたなら
なんて話そうかな。








その時は、彼女にまずお礼を言おう。



君のおかげで出会えたたくさんの宝物に





彼女はきっと昔と変わらない笑顔を向けてくれるはずだから…。






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