【第十話】▼父とは ページ10
ぬらりひょんが懇切丁寧に教えてくれたのはありがたかったが、すぐには理解出来なかった。
つまり、父に抱かれている赤子は、イツキという少年と兄・紫炎の生まれ変わりという事か。
その事が意味するのは、もう既に紫炎という兄はいない……消滅した、という事だった。
「A」
父に名を呼ばれ、ハッとした。
「何でしょう、父上」
取り繕うように言うと、父は左手を上げ、妖力をその手に生み出した。
注意深く見ていると、妖力は次第に剣を形作り、それは俺の前に滑るように移動してきた。
目の前に突如現れた剣がなぜあるのかが分からずに、呆然と見つめていた。
「……これは？」
問いかけると、ぬらりひょんが何かを察したようで顔がこわばった。
「それはな、王族に伝わる剣である『エンマブレード』という武器だ。
……Aよ、それでわしを斬るがいい」
「！！」
俺は突然言われた言葉の意味が分からず、驚愕した。
「……どういう事でしょう」
悪い予感がして、うつむいた。
父の言葉を聞きたくなくて、いっそ耳を塞いでしまいたかった。
「お前は幼い頃、半妖として皆から軽蔑されていただろう。
わしはその事に気付く事が出来なかった。
だからお前は、それを一人で抱え込んで辛い思いをして来たのだろう？
……飛び出した時も、今まで王族という鎖で縛りつけていた。だから、せめてお前自身の人生を送れ、と見送る事しか出来なかった。
何も出来なかったわしを恨んでいるのだろう？
ならば、この父を、倒すがいい」
しばらく語られる事に耳を傾ける事しか出来なかった。
違う、俺は父を恨んだ事など一回もない。
愛してくれていた。
それだけで、充分だった。
「……違います、父上」
俺は近づき、エンマブレードを手に持った。
「何だと？」
「父上はこんな俺でもただの息子として接してくれました。
恨んでなどいません。
むしろ、感謝しかありませんよ」
俺は笑って、反乱の意思なんて無いと手にあったエンマブレードを地面に置く。
「覚えていてくれただけでも充分なのに、俺の為なんかにこのような事をしないで下さい」
父は少々驚いたような顔をすると、やがて苦笑いし、またもや左手を振り上げエンマブレードを仕舞った。
終始見守っていたぬらりひょんはやっと安堵したようで微笑んでいた。
やがて、父はポツリとこぼした。
「……お前は、優しすぎるな」
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紅夜叉 - 続き……ないんですか？ (8月20日 0時) (
レス) @page15 id: fd0ff1a17a (このIDを非表示/違反報告)
へきしょく(プロフ) - 面白いのでまた更新して欲しいです！ (2020年10月11日 22時) (レス) id: 800e455777 (このIDを非表示/違反報告)
宵月夜(プロフ) - コメントしていただきありがとうございます！！ご期待に添えるように頑張ります！！ (2019年3月10日 18時) (レス) id: 535f385a7d (このIDを非表示/違反報告)
魔戒 - 面白いです頑張ってください (2019年3月10日 16時) (レス) id: b1d63bb0ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：宵月夜 | 作成日時：2019年3月10日 12時
