【第十一話】▼小さき存在 ページ11
エンマブレードを懐に仕舞った後、父は俺に隣に来るように指図した。
最初は自分があそこの空間に入って良いのだろうか、とは思ったが説得され長い階段を登り父の隣へ腰を下ろす。
座った時、階段の下が見下ろせる位置になり、とても新鮮だった。
……それはそうと、気になるのはこの赤子だ。
父の腕の中にいる金髪の赤子＿＿＿俺の弟と言えるのだろうか＿＿＿は、すやすやと寝息を立てている。
「A」
「……はい、どうしました？」
まじまじと見ていると、父が驚きの提案をして来た。
「この子を、抱いてみるか」
「……え」
予想外のことを言われて唖然とする。
チラリとぬらりひょんを見やり助けを求めるが、フッと微笑んだだけで何もしてくれない。
……何を期待してるんだ？
「腕を出してくれ、慎重にな」
言われた通り慎重にゆっくりと腕を差し出す。
突然の事で、非常に驚いた。
父は赤子を俺の腕にそっと乗せる。
その瞬間、命の重みがずっしりと体に来た。
小さかったが、思ったよりも遥かに重かった。
抱いているうちに怖さは消えていた。
腕の中にいる赤子に父性を感じたからだろうか。
ふと、涙がこみ上げて来た。
兄がいない事を実感した事で悲しさがあったのだろうか。
これはいけないと思い抑えようとするが両腕が使えない為どうしようも無かった。
一滴、また一滴と、赤子を包む布に涙が滴る。
「……兄上っ……！」
涙が止まらなかったが、父がたくましい手で拭ってくれた。
「A、どうだその子は。可愛いだろう」
「えぇ、とても、愛らしいです……」
父がほがらかに笑ったので、俺もつられて笑った。
つと、赤子が眠りから覚めたようで目をまん丸に開けた。
照明を受けて黄金色に輝いた満月のような瞳は、俺をしっかりと捉える。
そこにかすかに兄の面影が見えた気がして、目を見張った。
「……父上」
「何だ」
父が応える。
「俺は王位も、権力も何もいりません。けれど、父上の役に立ちたいのです。
これからは、影からこの妖魔界を支えたい！
それと、この子を……エンマを、俺に任せてもらえませんか？必ず、立派にします」
俺は自分でも自然にスラスラと出てきた言葉に驚く。父はしばし呆然としていたが、やがて困ったように笑み、俺の頭へ手を置いた。
「……分かった、頼むぞ」
同時に俺は、心の中で赤子が愛おしくて仕方がない自分を、何だか滑稽に思ったのだった。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
ラッキーアイテム
革ベルト
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 18人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅夜叉 - 続き……ないんですか？ (8月20日 0時) (
レス) @page15 id: fd0ff1a17a (このIDを非表示/違反報告)
へきしょく(プロフ) - 面白いのでまた更新して欲しいです！ (2020年10月11日 22時) (レス) id: 800e455777 (このIDを非表示/違反報告)
宵月夜(プロフ) - コメントしていただきありがとうございます！！ご期待に添えるように頑張ります！！ (2019年3月10日 18時) (レス) id: 535f385a7d (このIDを非表示/違反報告)
魔戒 - 面白いです頑張ってください (2019年3月10日 16時) (レス) id: b1d63bb0ce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：宵月夜 | 作成日時：2019年3月10日 12時
