待ち合わせ ページ3
あれから数日が経過した。
ベクセリアの町は、完全にとは言えないが活気を取り戻しつつある。
フェイル達も町人の手伝いをしながら、クルスの怪我の完治を待っていた。
そんなある日、
「どこか行きたい所があるんだろ」
「へ……！？」
急に図星をさされたフェイルが間抜けな声をあげた。
落としそうになった夕飯用の食器を慌てて持ち直し、発言者であるクルスを振り返る。
「べ、別にそんなこと……！」
「あるんだろ。気が抜けた時、しきりに外の方を眺めてたからな」
すぐに反論に持ち込むフェイルだが、一対一でクルスに勝てる筈もなく黙り込む。
「僕の怪我の完治を待っていたらあと一週間はかかるぞ。僕もあまり認めたくはないんだがな」
クルスは包帯をスルリと外して前よりも傷が塞がりつつあるが、抉れた手の甲を見せた。
その他にも病魔に取り憑かれた影響で体力の回復やら、致命傷はないものの、彼から病魔を追い出そうとした仲間からの傷やらが治っていないようだ。
もしも相手が医者なら、
「治ったかどうかは自分で判断する」
と聞く耳を持たないだろう。
しかし、今回の診断者は……
「あら、フェイル。どこかへお急ぎの用があるのかしら？」
さりげなく話を小耳に挟みつつ、食堂へと姿を現したリアンだ。
長年の付き合いで悟っているのか、クルスがリアンに反論することは少ない。
今回もその一つだ。
「……あるって言えばあるけど……」
これ以上隠せないと踏んだフェイルが、渋々口を開く。
と、
「お、どっか行くのか？」
扉を蹴破るようにして入ってきたガイアも、フェイルに視線を向けた。
どうやら彼は、部屋の外でも先程のリアンの声が聞こえたらしい。
最近になって、ガイアが野性動物なみの聴力を持つことが明らかになったばかりだ。
「あるけど別に急ぎじゃないから……」
「我慢するな」
フェイルの声をかき消すように口を開いたのはクルスだ。
「僕のせいで散々迷惑を掛けているんだ。一度くらい我が儘を聞くのが対等だろう？」
彼の意見に同意するようにリアンとガイアも頷く。
「どこであれ、今のままでは全員で向かうことは難しいですからね」
「待ち合わせの場所と時間でも決めてくれたら、俺らもそこに向かうぜ」
思わぬ提案に感激を隠せないフェイルはチラリと窓辺に視線を送る。
そこにはこれまでのやり取りを聞いていたサンディの姿が。
「いいじゃん。これで天の箱舟に戻って天使界目指せるヨ！」
親指を立ててグーサインを見せるとともに、サンディはウィンクをして見せた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 18人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
CrazyBook(プロフ) - キキさん» すみません、未満警察とはなんでしょうか？ (2021年3月8日 20時) (
レス) id: 66a0a0e5f5 (このIDを非表示/違反報告)
キキ(プロフ) - CrazyBookさん» その他に未満警察に関して詳しいですか？ (2021年2月21日 17時) (レス) id: 1f8411eea9 (このIDを非表示/違反報告)
キキ(プロフ) - うーん・・・まずオチをイザヤールにして設定は作者の設定を参考して書いてみようかな？どの部分か・・・うーん・・・わからないです・・・ (2021年2月21日 17時) (レス) id: 1f8411eea9 (このIDを非表示/違反報告)
CrazyBook(プロフ) - キキさん» 設定のどの部分が使いたいですか？ (2021年2月21日 17時) (レス) id: 89127ffd6d (このIDを非表示/違反報告)
キキ(プロフ) - CrazyBookさん» うーん・・・ (2021年2月21日 16時) (レス) id: 1f8411eea9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：CrazyBook | 作成日時：2018年10月11日 23時
