秘密があっても仲間は仲間

死活問題 ページ37

形の定まらない煙のような体が、徐々に眼球を包んでいく。

先程の香りに色を付けたように毒々しい桃色に、所々黄色や緑の筋が浮かんでいる。

一同の身長を軽く越える程に形が出来た時、音も立てることなく体の中央が縦に裂けた。

その奥は乾いた血のような暗い赤。

口のようにそこを震わせ、相変わらずの眼球が6人を捉えた。

「これが……呪いの元凶……！？」

驚くあまりに足が動かないルーフィンは、後退ることも叶わない。

と、

ーオろかナる しンにュウ者ヨ

ワれヲ ふたタビ封印せンと やッテキたカ……

ひきつった高音が一同の耳を突いた。

更に顔を強ばらせ各々の武器を構えたフェイル達4人を、魔物は憎々しげに見つめる。

ーソうハさセヌ……

さセヌぞォォォ……！

なんジに病魔のワザワイあレ！あレ！あレ！

ワれ、病魔パンデルムの邪魔をスる者、

すべテひトシく 死あルのミ！のミ！のミ！

狂ったような金切り声を上げ、魔物……

いや、病魔は一同に襲い掛かった。

標的となったのは……

壺を抱えたルーフィンだ。

「わ、わ、わ！？」

金縛りが漸く解け、その場に尻餅をついた彼を庇うようにフェイルが扇を広げる。

扇に掛かっていた重みはすぐに消え、病魔は煙の姿へと戻る。

「貴方を守ったままだと戦いにくいです！」

邪魔、を引き伸ばしたような彼女の言葉にルーフィンは咳払いをした。

「分かりました。僕が壺を修理する間の足止めをお願いします」

それが貴女達の仕事でしょ？と付け加えられ、フェイルはすかさず頷いた。

そして病魔に向き直る。

「コイツ、ぶん殴れるのか？」

自身にとって死活問題な事を尋ねるガイア。

彼に返したのはフェイルだ。

「さっきルーフィンさんを守った時は実体があった。けど、すぐに煙に戻ったんだよね……」

彼女の発言に

「それなら」

と口を開くクルス。

「アイツに物理攻撃を仕掛けさせればいい……だろう？」

彼は戸惑いもなく“イオ”を唱えた。

病魔が内側から爆発し、眼球が辺りを飛び回る。

再び輪郭が戻ってきたと思えば、病魔の口らしき部分から桃色の霧が放たれた。

発症→←甘い香り

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