人生万事塞翁が馬【はじめしゃちょーの畑】 (ページ20)

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分かってるページ20

ノブを捻りドアを開ける。

明かりは着いていた。

玄関にはよく見知った靴

「おかえり。」

アイツだ。

「遅かったじゃん。何してたん？」

「別になにも。」

「あっそ。早く飯ー」

ふてぶてしいやつ。

あんた、私にバレてないと思ってんだろうけど。
全部知ってんだからね。

そう言えるわけもなく、ご飯の準備に取り掛かる

「んー、シュークリーム買ったん？1個だけ？」

あ、それは私のシュークリーム

「食っていい？」

「だめ、私の」

「は？俺のは？」

あるわけないでしょあんたのなんて

今頃やふへゐさんの買い物袋の中だよ

「なんで俺の分買ってこないわけ？自分だけ美味しい思いしようっての？意味わかんねぇ笑お前ポンコツすぎん？」

まーーた始まる、

こいつはいっつもそう

自分がいい思いしないことあると、ぜーんぶ私にぶつけてくる。

とは言っても、別に殴られたりするわけじゃないからマシな方だと思うけど。

「何？？ごめんくらい言えねぇわけ？笑お前まじでクズかよ。」

あんたに言われたくないし。

「萎えた。帰るわ。」

おーー帰れ帰れ。

「んじゃ。」

バタン、と乱暴に閉められた玄関。

張り詰めていた空気が一気に溶けていく。

「はぁ……こういう時は突っかからない方がいいんだよね。そうでしょ？」

自分以外誰もいない部屋の天井を仰ぎながら、ポツリと呟く。

ふたつ作ってしまったハンバーグ。
ひとつは明日食べよう。

ほんとは分かってる

突っかからない方がいいなんてことないって。

言えないんだ。怖くて。

めんどくさくなるのが嫌なんじゃない。

1人になるのがいやなんだ。

あんだけ汚い言葉を言われても、どんだけ心を裏切られても、やっぱり1人は辛いし怖い。

「なんでこんな思いしながら好きな物食べなきゃいけないのかな」

その日のハンバーグは涙の味がした。