378) あの丘で2 (You side) ページ28
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A「ジニョクさん…」
ジニョク「Aさん、大丈夫?走ったりしてどうしたの?」
目の前のジニョクさんは、昨夜穴が開くほど見ていたパソコンの中の人と、顔は似ているけれど雰囲気がまるで違う。
笑顔が眩しいほどのジニョクさんを見て
やっぱり別人だったんだ。
ホッとしたのか力が抜けてしまった。
ジニョク「はい!」
差しのべてくれた手からは、かすかに絵の具の匂いがした。
A「すいません!また会えたと思ったら嬉しくて!」
ジニョク「だからって走らなくても(笑) 逃げたりしないよ。怪我はない?」
丘の上はとても寒いのに、ジニョクさんの手はとても温かかった。
ジニョク「ああ…でも。またAさんに会えるなんて。僕も嬉しいよ。」
もう転んだりしないのに、ゆっくりと手を引いてくれる。
ジニョクさんが描いた絵の前に、ふたりで立った。
この丘から見た、ソウル市街と美しい青空の絵。左右に対で描かれた雲はまるで夏の雲のようで
先日見た時よりもずっとずっと素敵に仕上がっていた。
A「完成したんですね…」
絵から視線をそらせないけれど、ジニョクさんが大きく頷いているのがわかった。
ジニョク「さっき…やっとね。まさか完成したこれを人に見せる事があるとは思わなかった。」
A「何て言っていいか…吸い込まれそうです。この世と天国を繋ぐ入り口みたい…」
ジニョク「…」
A「こんなに素敵な絵を一番に見せてもらって…ありがとうございます!」
ジニョク「いや…Aさんは…あれから描いているの?」
A「いえ…まだ…あれから全然進んでいないんです…」
ジニョク「そう…でもAさんならきっと大丈夫。気負わず愛する人に手紙を描く気持ちで描いてみるといいよ。」
A「愛する人に手紙…ですか?」
ジニョク「そう。手紙…ってほど大袈裟なものじゃなくても、思った事をスケッチしてみるといい。日常で嬉しいと思った事や綺麗だと思ったこと。スケッチして大好きな人に見せるだけでも立派な手紙だよ。素敵だと思わない?」
A「そうですね…」
ジニョク「ああ、ごめん。僕の独り言だよ。気にしないで。コーヒー淹れるよ。座って?」
前回と同じように簡易椅子を作ってくれると、荷物の中からポットを取り出した。
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作者名:mari | 作成日時:2020年3月8日 14時