335)焦り（YN side) ページ35
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親父にあんな事を言われたからなのか無性にAに会いたくて、会社に到着するなり電話をかけた。
兄貴の事が心配じゃなかった訳じゃないけれど、俺は兄貴の行き先など見当もつかなかったから。
何かあったら連絡してくれと、秘書の女性に頼んで。
《ここ、何処だと思う？》
Aからのメールに貼ってあった写真は、ソウル市街から少し離れたところ。
何でこんなところに？
今日から仕事は休みで、午前中は武君を送りに空港へ行っていたはず。
いくらなんでももう家に戻っていてもいい時間だ。
見合いなどする気はさらさら無いが、電話が繋がらないだけでこんなにも不安になるなんて。
今日はもう帰ろう。
一刻も早く顔が見たい。抱き締めたい。
もう随分と陽が傾いてきた。何だか胸騒ぎがして、ストーカー並みに電話をかけ続けた。
「…あ ユノ？」
ユノ「A！？どうした？今どこにいる？」
何度目かのコールにやっと電話に出たAの声は、半分寝ぼけていたようで
A「ここ？えっとソウル駅だよ。バスを降りたところ。」
ユノ「何度電話してもでないから心配した。なんでこんな時間にバスなんか…」
A「お天気が良かったからね！空港から適当にバスに乗って。そしたらね、どこに行ったと思う？？ユノが連れていってくれた綺麗な夜景が見える丘の…」
ユノ「すぐ行くからそこを動くなよ！」
会社を出るとタクシーに飛び乗って駅に向かった。
ソウル駅の手前で信号に捕まった。
ユノ「ここでいいです。お釣りはいりません。」
運転手に紙幣をわたすとタクシーを飛び降りた。
早足でバス停が並ぶ南口のほうにまわると、今朝と変わらない姿のAがカラフルなアイスクリームが並ぶ店の前で中を覗きこんでいる。
アイスを前にニコニコしている顔を見ていたら、どうして自分がこんなに焦っていたのかもわからなくなった。
ユノ「食べたいの(笑)？」
後ろに回って耳元で囁いた。
A「ビックリした！早かったね。お疲れさま。」
満面の笑みで俺を迎えてくれる。
ユノ「早く会いたかったから。行こう。腹が減ったよ。」
A「どこに？」
ユノ「俺のマンション。」
一刻も早く二人きりになりたくて、Aの手をひいてタクシー乗り場に向かった。
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作者名：mari
| 作成日時：2019年5月16日 0時
