334)出会い（You side) ページ34
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男「Aさん、辛いことがあって絵を描かなくなったって言っていたけど…前に進めそう？」
A「はい。誰にも言えなかった事を、大切な人に打ち明けたんです。そうしたら不思議な位に心が落ち着きました。この10年間ずっと立ち止まらずにきて、その事を考えるのを避けた来たんですけど…彼に話して嘘みたいに落ち着いて…」
男「彼？Aさんの彼氏？」
A「はい/////// とても尊敬出来る人です。今からでも遅くないから夢を追いかけたら？って言ってくれて。」
男「…そう」
A「さすがに画家になる夢はもう無理でしょうけど、もう一度勉強してみようと思ってます。」
男「そう…いつかAさんの描く絵を見てみたいな。」
A「自分の思うような絵がかけるようになったら、またここに来ます。またお会いできるといいですね！」
男「そうだね。僕もなんだか勇気が出たよ。またいつかここで会えたらいいね。」
遠くにバスの車体が見えてきた。
A「あ、バスが来たみたいです。」
借りていたブランケットをきれいに畳んで男性に手渡した。
A「ありがとうございます。とても暖かかったです。それにとても楽しかったです。」
男「どういたしまして。僕も楽しかったよ。久しぶり絵の事について話せた。」
A「はい。私もです。絵の話をするのなんて、高校生の時以来でしたから…結局、邪魔をしちゃいましたね…ふふっ！」
信号もない田舎道だから、あっという間にバスは目の前にやって来た。
男「じゃあね！Aさん。気をつけて。またいつかここで。」
A「はい！えっと…」
男「僕はジニョク。チョン・ジニョクです。」
A「ジニョクさん、いつかまたここでお会いしましょう！」
軽く頭を下げてバスに乗り込むと、一番後ろの席までやって来た。
外が見える窓際の席に座ると、まだ停留所で待っていてくれるジニョクさんに手を振った。
バスはゆっくりと発車して、ジニョクさんも小さく手を振り返してくれた。
やがてジニョクさんは見えなくなり…
A「ジニョクさんって言うんだ。」
素敵な絵を描く、優しい人だったな。
ソウルの方角に走るバスは緩やかなカーブが続いて
いつしかすっかり夢の中の人になっていた。
バックの中で何度も振動しているスマホに気がつかずに。
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作者名：mari
| 作成日時：2019年5月16日 0時
