220)フラッシュバック<YN side> ページ20
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目を覚ましたドンヘを看護師さんに託して、俺は一旦自宅に戻った。
今すぐAに電話したいけれど、まだ夜は明けてない。
連日の撮影で疲れてるだろうし、少しでも眠って休んでもらいたいから、連絡するのは朝まで待つことにした。
《ユノ…今戻りました。おやすみなさい。いい夢を見てね。》
Aが入れた留守電を何度も何度も繰り返し聞いてみる。
ユノ「やっぱり元気無い気がする…」
絶対に気のせいじゃない。なんかあったんだ。
待つと決めたのに気になってスマホを離せない。
Aには本当の事は言えない。
俺が襲われて、代わりにドンヘが怪我したなんて言ったら、撮影どころじゃなくなるのは目に見えてる。
せめて撮影が終わるまでは、絶対にAの耳に入らないようにしなければいけない。
Aだけじゃない、ドンヘが言うように事を大事にしたらきっと親父やソヨンの父親が報復に出るに違いないから。
ドンヘの言うとおりに痴話喧嘩としてすませるしか方法は無いんだ。
朝になったらAに電話をしよう。そのあと警察に行って、俺を襲ったあの男ともう一度話をしよう。
ユンと話すのはそれからだ。
重たい体を引きずってベッドまで何とかたどり着く。
血のついた上着を脱いで、ベッドに横たわると、そのまま意識を手放した。
*
*
*
翌朝
カーテンの隙間から差し込んだ日差しが頬をかすめて目を覚ました。
シャワーも浴びずにそのまま眠ってしまったらしい。
持ったまま寝ていたスマホを見てもAからの着信は無かった。
ユノ「7時40分か…」
撮影のスケジュールなんてきっと不規則なんだろうけど、いささか早すぎな気がして。
スマホをベッドに置いたままシャワーを浴びに行った。
明るい所でよく見ると、上着だけじゃない、シャツにもズボンにも血がついていた。
あの男が躊躇せずに本気で向かって来ていたら…
刺された場所が悪かったとしたら、ドンヘは死んでいたかもしれない。
俺の身代わりとなって…
打ち付けるシャワーの下で、手の震えが止まらない。
あの一瞬で俺は全てを失っていたかもしれないんだ。
今になってあの時のフラッシュバックが俺を襲った。
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作者名：mari
| 作成日時：2018年7月7日 0時
