001)待ちぼうけのクリスマス1 <You side> ページ1
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≪もうダメかもしれない≫
1年前の今日も同じ事を思っていた。
それからずっとそう思い続けて、クリスマスイブの今日も彼が来るのを待ってる。
我ながら学ばない奴だと思う。
28にもなって落ち着かない娘に、両親は呆れているだろうし
何より決断出来ない自分が嫌になる。
私は彼の一番じゃない。そんなことはとっくにわかっているのに。
ソウル市内の高級ホテルの最上階のレストラン。
≪A。そこで待ち合わせしよう。イブはお前と過ごしたい…≫
そんな事を言われて、のこのこやって来た私は、夜景の見えるカウンター席でひとりシャンパンをチビチビと飲みながら、もう既に一時間弱ここで彼を待っている。
電話も繋がらないしメールの返信もない。
これが彼の答えなんだ。
あと10分だけ。10分待って来なかったら帰ろう。
そしてもう会わない。
普段から誰でも入れる訳でもないこの店は、当たり前だけど今日はカップルばっかりで。
ひとりでいるなんて私くらいじゃ…
A「あれ?」
後ろを振り返ってみると、スーツ姿の男性がテーブル席にひとりでポツンと座っていた。
彼の前の席にはセッティングされている空席。
A「…お仲間かな?」
なんだか急に親近感をおぼえる。
その時、ふっと顔をあげた彼は…小さな顔に端正な顔立ち。とても素敵な人だった。
A「イケメンなのに…フラレちゃったのか…」
じーっと見ていた私と目が合うと、お仲間さんは私を見てフッと目を細めた。
A「…なによ。自分だって待ちぼうけのくせに、笑うこと無いじゃない。」
その時、テーブルの上に置いていたスマホが揺れる。
彼からのメールだ。
≪遅くなる。Aの家で待ってて≫
A「……。」
1時間半もここで待ってたんだよ!
たった一文だけのメールに、悲しいのか悔しいのかよくわからない気持ちになる。
来ないとわかった以上、一刻も早くこの店から出たくて、電源を切ったスマホをバッグに投げ込んだ。
「あの…すいません。」
背後から声がして振り向くとそこには〈お仲間さん〉が立っていた。
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作者名:mari | 作成日時:2017年12月26日 0時