あなたがやっぱり好きでした 2【N.K】 (ページ30)

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まずってことはページ30

「まずここ」

さっき松本くんに言われた言葉が

私の頭の中で

繰り返し再生される。

あれ

こういうことだったのか。

冒頭のシーンが終わってから

また次のシーンを指示され。

セリフ言って

なんフレーズかを歌って

松本くんを真似て少し踊って。

一体かれこれ何分間

私はこんなことをしてるんだろう。

ぼんやりとそんなことを考える。

それでも

自分じゃない誰かになりきれるっていうのは

すごく楽しいし

大勢の目の前で

こんなことをするのも

今は恥ずかしさなんて欠片もなくて

むしろ快感を感じる。

皆を包んでいる静寂が。

見られてるって感覚が。

ベルっていう役が。

心地いい。

初めてだけど

全然

悪くない感覚。

「こんぐらいで充分かな?」

「だね。もう良いよ、Aさん。ありがとう」

櫻井くんと松本くんのこえに

我に返った。

私に集中している

皆の視線。

さっきまで

私が演技とかをやって見せる前までと

同じ光景。

でも。

微妙に

その視線の種類が

変わった気がする。

「このままやっちゃおうか」

松本くんが櫻井くんにそう問いかけると

「うん」

櫻井くんは深く頷いて

「ニノ。ここ」

自分と私の間にあけたスペースをさして

二宮くんのことも

私にやったのと同じように

前によんだ。