愛しのキキーモラ 7 【ヴィクトル・ニキフォロフ】 (ページ9)

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皇帝とキング　⑤ ページ9

ヤコフ先生、リリア先生！と話し掛けに行った海咲を手放したヴィクトルは、勇利にいくつか注意点を伝えている。
その様子をこっそり見ていたユーリは、リリアがヴィクトルと同じ様に海咲を抱き締めているのを見て、確かに抱き締めやすい身長と雰囲気だと思う。

(抱き締めても、嫌がるなんて事しなさそうだしな)

ふにゃりとした笑顔を向けられると、力が抜けるというか、撫でまわしたくなる気がする。
愛猫にも似たあの掴めなさも一因かもしれない。

「では、もう少ししたら行ってしまうのですか」

「はい、私フィギュアの事は全部ヴィーに丸投げなので」

出来る事はサポートだけなので、今回は動画を撮ってきますと笑えば、こちらに気づいた海咲がユーリの両手を握った。

「ユーリの動画も撮るね！ヴィーから貰ってね」

ずっと見てるから！と微笑まれ、おぉ・・・と思わず頷いてしまう。

「俺を応援して良いのかよ」

「え？なんで？知り合いだし応援しちゃ駄目なの？」

長谷津の人からユーリがヴィーに教えて貰ったプログラムを昇華しようと苦しんでたって聞いて応援したいって思ったんだけど、と言われ顔が真っ赤になる。

「て、敵を応援するとか馬鹿か。
俺が勝ったらヴィクトルはロシアに残って貰うからな！」

それでも良いのかよ！と睨めば、ふわりと花が綻ぶような笑みを返され戸惑う。

「その時はその時で考える。
私は選手じゃないから、私とヴィーが一緒に居られる方法を二人で考えるから気にしないで？」

だって、戦いの場だもの、そういう事もあるってわかってる、と優しく両手を握っていた手の力が少しだけ強められる。

「だから、私はユーリの本気のアガペーが見たい」

ワクワクしているの、と微笑み抱き締められる。
柔らかな女の子の香りと、ヴィクトルの香水の移り香が混じっていて、その移り香を上書きしたくなる。

「ヴィクトルの香水臭ぇ」

「え？そんなに移ってるの？」

最近よく言われるんだけど、と困惑している海咲に、ユーリはくっ付き過ぎなんじゃねぇの、と皮肉ればその文句はヴィーに言って～と楽し気に、きゃらきゃらと笑われた。