自己表現 ページ39
横を、悔し涙を流しながら歩いて行くのを視線を逸らしてみない様にした。
が、突然自然体で居る海咲から手を握られて勇利はドキドキしながらもその手を振りほどけない。
「み、海咲ちゃんあの・・・・」
「ん？」
どうかしたの？と顔を覗き見られ、な・・何でもないよ！と言ってしまう。
「？・・・・そう？」
冷たくて、小さな手に勇利は(女の子の手だ)と心音が大きくなる気がする。
最近はヴィクトルから手を引かれていたが、その大きさも暖かさも違うのにホッとする。
「あれ？」
ドキドキはしているけれど、安心感も感じ勇利はもしかして、この為に？と海咲を見るがその視線はモニターのユーリを見つめている。
「綺麗な衣装・・・・・」
「え？あ、うん。
ユリオの性格みたいだよね」
暗に、激しいと言えばくすくすっと笑う海咲に笑っちゃ悪いよ、と言うとごめん〜と笑いながら謝っている。
「ユーリ、今何を考えているのかな？」
息つく間もない激しい曲の中できちんと形を完成させて次の動きに移る。
その完璧さが美しさに繋がり、表現点は高いだろうと思われる。
「リリア先生の振付って言ったけど、これってヴィーなら軽々なんだよねぇ・・・・」
「そうなの！？」
「うん、だけどヴィーあんまり持久力ないから」
練習だけでへばると思う、と言われだから海咲と5キロ走ってからは走り込みとか始めたのかと納得する。
「ねぇ、海咲ちゃん・・・・もうヴィクトルの事怒ってないの？」
「え？
怒ってるけど・・・・さっき電話口で泣かれちゃった」
この恰好なら別人みたいだし、画面に映っても白が切れるから、らしいよ？と苦笑する。
「それは・・・・うん、一応海咲ちゃんの事守ろうとしてたんだね」
「うん・・・・・私、『ヴィー、要らない』って口頭で言っちゃったんだよねぇ」
めちゃめちゃ泣くから通話長くなってしまったと肩を竦める海咲に、勇利は直接も言ったの！？と顔面蒼白になる。
「え・・・と、仲直りした？」
「勿論」
うふふ、と笑う海咲から、モニターに目を戻した勇利は後半のジャンプの変更にユリオ本気だ、と顔が引き締まる。
「僕の方が、体力あるよ・・・・ユリオ」
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作者名：若桜 | 作成日時：2018年1月7日 22時
