エレベーター ページ38
バイキングになっている朝食を取り、ヴィクトルは自身のコーチに会いに行く！と海咲の手を握ったのを見て、勇利はじゃあ僕は一足先に部屋に戻っているよ、と分かれる。
楽しそうに歩くヴィクトルに引きずられる様にしながら心配そうに振り返る海咲に、大丈夫だよ〜と手をふり、二人の姿が見えなくなるまで振っていたが、少し不安でもある。
――コーチに会いに行って、そのままロシアに残る・・・なんて言い出さないよね？
まだ、海咲も日本で仕事が残って居るし、そんな事はしないだろうけれど。
そう自分に言い聞かせながらエレベーターホールに行くと、韓国のイ・スンギル選手と鉢会った。
「(あ、韓国のイ・スンギル選手
・・・・この間の中国大会と違って、仲良い選手居ないんだよなぁ〜)」
正直、コーチがヴィクトルで海咲までついて来てくれて助かったと思う。
チェレスティーノだったら発破を掛けてくるし、試合前に電話なんて許してくれなかった。
そもそも、海咲に対して嫌悪感すら向けていたので、それを感じるだけで胃が痛くなった。
(そういえば、何で海咲ちゃんの事嫌ってたんだろう？)
あのヴィクトルさえも――いや、彼の場合は初恋の相手で強引に結婚まで持ち込んだからだろうけれど――その言葉と存在については勇利にプラスになると判断してくれるのに、彼はまるで海咲ちゃんが堕落させる悪女だとばかりに批判するのだ。
(海咲ちゃんも、チャオチャオが居ると知ると離れて行ったし・・・・相性悪かったのかなぁ)
僕、海咲ちゃんの存在なかったらチャオチャオの発破に潰されていたかも知れないと気づく。
ヴィクトル自身も朗らかだし、勇利のスケートについてのダメ出しはしても批判はしない。
私生活でも本当に嫌な事以外は許容してくれる。
それはとても恵まれた事だと気づいたのはチャオチャオという比較対象が居るからだけれど。
(海咲ちゃんって、そう考えるとヴィクトルに必要な相手何だなぁ)
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作者名：若桜 | 作成日時：2018年1月3日 23時
