愛しのキキーモラ 4 【ヴィクトル・ニキフォロフ】 (ページ26)

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花束を君に⑤ ページ26

指輪を見せて貰った勇利は可愛いデザインだね、と褒めるがヴィクトルは薄く笑うだけで何も言わない。

「このままじゃダメなの？」

「気に入らないんだ」

価値も、デザインの幼さも、材質もと眺めながらもそこに海咲を見つめる時の甘さも熱量も無い。

「もっと繊細で海咲の為に作った物にしなきゃ駄目だなぁ」

こんな既製品じゃ駄目だと溜息を吐くヴィクトルに勇利は大変だなぁと感心してしまう。
そんなやり取りを見ていた真利がふつうは既製品のサイズ直し位だと言うと、ヴィクトルはそれが嫌で限定品にしたけれど、どうやっても他人と被るのが嫌になったのだと肩を竦める。

「あんたどれだけあの子に貢ぐ気よ」

「持てるもの全てを捧げても足りないよ？」

そもそも、貢がせてくれないからこういう所で受け取らせさせなきゃ！と反論する彼に勇利の父はだけどねぇと苦言を呈した。

「どうしてもスケーターは現役を退いたら収入がなくならんね？」

選手・コーチ・アイスダンサーなども体を損なえばその分だけ収入は減る物だ。

「貯めれる時に貯めといた方がよかよ？」

結婚したら二人分の生活費が掛かってくるし、冠婚葬祭もあるし、子どもが生まれたらまず貯金は出来ないと言うが、ヴィクトルは大丈夫だよ！と笑う。

「蓄えはずっとしてきたし、運営もお願いしてるしね」

じゃなきゃ、選手を休場してコーチに来たりは出来ないよ、勇利パーパと笑う。

「・・・・ヴィクトルって、大金持ちなんだね」

「選手歴長いしね」

使い道も無かったから結構溜まってるよと笑う。

「食事も生活も良哉の家に入り浸って居たし、試合の時は支給されるしね。
だから海咲に貢ぎたいのにさせてくれないからね～」

一度イヤリングを送ったら高価過ぎるとどん引きされて泣かれたという。

「喜ぶかと思ったのに」

嬉しいけれど、持ってるのが怖いと泣かれたと聞き、真利がふと何歳の時？と尋ねる。

「七五三のお祝があるって聞いたから七つの時だね」

「そりゃ泣くわ」

嬉しい反面、海咲みたいに大人びた子はその価値に泣くよと馬鹿だね～と笑う。