愛しのキキーモラ 4 【ヴィクトル・ニキフォロフ】 (ページ15)

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アハ体験？④ ページ15

『勇利君を守って』

海咲の言葉にはどれだけの願いが込められていたんだろうと思うと、その必死さを茶化してしまった事が悔やまれる。
いつもいつも、海咲の本音に気づくのは時間が経ってからだ。
何も言わなくて言葉を飲み込んだり、強くは言わないから、時にいつの間にか諦めて自己完結している。
その事に気づけた時は良い。
だけれど、今回の様に本当に大切な事に気づくのがこんなにも遅れてしまったら意味がない。

「『言わぬが花』
・・・・言葉に出して率直に言うよりも、黙っている方が良いという諺があるわ。
その後に『知らぬが仏』と続くのだけれど、知らなければ、知らないで過ごせたのに、知ってしまったため苦しむという意味なのだけれど。
海咲はそれを知って居るだけよ」

別に、意地悪で言わなかったり、怖くて言わなかったわけじゃないわと暗くなった雰囲気を切り捨てる様に言い放つミナコに勇利は先生、と止める。

「何よ」

「ヴィクトルだって分かってると思うよ」

「・・・・そうね」

ただ、あの子は色々溜め込む癖に誰にも頼らないからムカつくのよと顔を背ける。
あぁ、こっちから国内線に移動しましょと指さす。

「泣けばいいのに、泣かなくて笑うからムカつく」

不っ細工な顔して大丈夫とか言うのよ、と泣きそうな顔をするミナコに勇利は海咲ちゃんて我慢強いよね、と返すとヴィクトルは全然知らなかった海咲の事に胸を引き絞られる。

「日本では、生き辛かったんだね」

だからロシアに来ていたんじゃないのか？とヴィクトルに言うクリスに、お祖母さんもで色んな親戚の家に行って息抜きをしていたのだと言われる。
国内線側に行けば人の込み合い具合が増し、三人の姿は風景に紛れた。

「だから、優しいのかな」

「でしょうね」

まったく、と溜息を吐いたミナコが、ずっと勇利かヴィクトルしか見ない事に気づき首を傾げる。

「そういえば、ミナコはクリスのファンだったのに何も言わないね？」

「いやあぁぁぁ」

恥ずかしくて見れないのよ！と叫ぶ彼女にくすくすとクリスは笑う。
日本人って面白いね、と言われ勇利は胃が痛くなってくる。