いつか王子様が �� ページ41
その言葉に、海咲は真っ赤になったがヴィクトルはゾッとする。
『気づかれ無い様な静かな物』
そのWordに血の気が引く。
もし、自分が海咲を追い詰めても誰も気づかないと言う事に、やはり海咲に怒って貰わないと、と思う。
これはサービスです、と言って離れる彼にお礼を言いつつヴィクトルは海咲に『離婚したくないっ』と漏らす。
「は？」
「海咲、願いだ。
俺から逃げないで」
「へ？」
数分前の彼と同じ内容なのに、告げる彼の表情の違いに海咲は呆気にとられる。
威圧し、迫ってきた先程と違い、懇願する彼に一体何がこんなにも彼を怯えさせるのかと考えて、あぁと気づく。
「海咲〜」
「ヴィー、やっぱりごめんなさいって言わせて？
私が勝手に肩肘張ってたのも悪かったんだから」
頼るのって、苦手なのと苦笑する。
「私って結局みんなに守られてたわけだし。
これ以上頼っていい加減にしろって言われるのが怖いの」
ヴィーの事、本当に好きだから飽きれられるのが怖いと言えばヴィクトルは俺もだよ、と返す。
「俺達、似たモノ同士なんだね」
恐くて噛み付く俺と、怖くて尻込みする海咲、と言えば海咲は相手に踏み込むのが怖い所もね〜と笑い飛ばす。
何時の間にかすっかりいつも通りになった海咲に、ヴィクトルは海咲の方が大人だと落ち込む。
何時も、辛さを飲み込んで前に進んで来たのかと思うと、その間傍に居なかった自分に頼る事に不慣れなのは当たり前じゃないかと気づかなかった自分に飽きれる。
その癖、辛い時は何時も海咲に甘え会えない時は海咲との記憶に縋って来た自分がすぐ海咲を求めるのはもはや癖になっていて、海咲がそうではない事に焦れただけだ。
「俺、格好悪い」
「あはは」
今日のヴィー怖かったけど、見た事無かったヴィーが見れたってことで、と乾杯をしようと笑う海咲の強さにヴィクトルは苦笑しショットを煽った。
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作者名：若桜 | 作成日時：2018年4月2日 20時
