あぁ愛しのキキーモラ２【ヴィクトル・ニキフォロフ】 (ページ33)

今日:12 hit、昨日:2 hit、合計:39,775 hit

妻と婚約者　③ ページ33

日本語で交わされる会話に、ヴィクトルは日本語もわかるのかと驚きつつ目の前の少女の様な体躯しか持たない日本人女性がこの場の一番の支配者だ。
本人は全く気付いても居ないが、会場の誰もが彼女の動向に注意し、それに付随してヴィクトルの動きも注目を浴びている。
まるで彼女が女王かの様に甲斐甲斐しい彼に対して、全く気にも留めず、恥ずかしがって誰かの陰に隠れ様としている様子は、彼の執着の強さと海咲の幼さが目立つ。

「すみません、コーチちょっと今日はお酒を飲み過ぎたみたいで」

「ムッ勇利？
俺まだそんなに飲んでないよ」

「ヴィクトル！」

黙っててくれないかなぁ！？と聞こえんばかりの咎める声音を切り捨てるヴィクトルに、海咲がじっと見つめているのに気づく。

「そ・・・その様だな、すこし踊って来たら如何かな」

酒も回って気持ち良く眠れるかも知れないと言うと、急にヴィクトルの顔から笑みが消える。
ゾクｯとするほど整った美貌が、かえって綺麗過ぎて慄く四人は初めてヴィクトルの地雷を踏んだ事に気づくが、一体何が地雷だったのかがわからない。

「・・・・そうだね」

失礼するよ、と片手を振った彼が海咲を抱え上げる様に歩く事を促し去っていくと、イザベラは恐怖の余りずっと抱き支えてくれていたJJに抱き縋った。

「怖かった・・・・っ」

「怖過ぎるッッ」

震える息子達に背を向けていた両親は、お互いの手を握りしめ震えていた。