妻と婚約者 ページ31
再び戻って来た日本人達に、自然と目が吸い寄せられたJJとイザベラは、翻るスカートから覗く海咲の足指の小ささに驚く。
身長に見合った小さな足が、舞うその様はまるでバレリーナの様な軽やかさとは違ったしなやかな動きに妖精みたいだと思う。
「そういえば、キキーモラって何かしら」
「うーん」
そもそも、何語なんだろうロシア語？と首をかしげていると、JJの両親からロシア語だと回答が返って来る。
「へぇ」
「糸紡ぎ、シルキーと似ているロシアの妖精だ」
「歳をとらない少女とも、老婆とも言われているわ」
各国の記者が、今調べて廊下で大声で話して居たと肩を竦める。
「永い初恋を諦めきれないアイツの妄想だと思っていたんだがな、実現してみりゃ本当に妖精みてぇな相手だったってこった」
「本当に」
現に、ヴィクトルが何時も使っているティッシュケースは彼女が作ったものじゃないと使わないって言うのは有名な話だと言えば、イザベラは驚く。
「そんなに？」
「ヴィクトルの永い初恋の話は有名だがな、ここ最近全く姿を見せなくなったのに指輪をしていないから失恋したのかと思っていたが・・・・どうやらガッツリと捕食したらしい」
一体、どんな手を使ったのか知りたくもないと身震いする父に、JJはそうだったのかと見つめる。
「イザベラ、悪い事は言わん。
海咲には近づくな」
海咲に突撃した女は全てヴィクトルによって叩き潰されてきたと首を横に振る。
「世界が見ているヴィクトルはまやかしだ。
本当のアイツは誰よりも海咲とスケートに対して貪欲で、海咲を害する者には冷酷無慈悲な鉄槌を下す氷の皇帝だ」
決して貴公子でも、世界一のモテ男でもないと言えば、JJとイザベラは数日前の『大事なんだ』と言ったヴィクトルの冷たい眼を思い出し震える。
マズい！と顔をした二人に、両親達はやれやれと首を振った・・・が、近づいてきた三人に顔を引きつらせる。
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作者名：若桜 | 作成日時：2018年4月2日 20時
