真冬の夜の夢 ページ27
アイスダンサー達がそれぞれのパートナー同士が交替しながら輪舞を踊り始めると、男子スケーターも女子スケーターも入り交じり、バンケットがまるで舞踏会の様だ。
その中で、壁の華宜しくじっとその様子を見つめている海咲の横で寄り添うように傍に居るヴィクトルは退屈だと溜息を押し殺す。
「ねぇ、海咲？退屈だよ〜」
「行って来て良いよ？」
「・・・・海咲を此処に一人にして？
冗談じゃない、絶対嫌だ」
俺は海咲と踊りたい、と言うが不思議そうに視線を人々の輪に向けていた海咲が仰ぎ見ると、ヴィクトルはイライラとした様で眉間に皺が寄っている。
「ねぇ、海咲踊ろう？」
「嫌」
あの中に入りたくない！とヴィクトルから一歩離れたのを見て、彼は頑固だ・・・と溜息を漏らしてしまう。
「じゃあ・・・どうしたら一緒に踊ってくれる？」
「・・・・・」
途端に、悲し気な顔になる海咲にヴィクトルは口を噤む。
突然海咲の雰囲気が変わり、どうしたのだろうかと首を傾げる。
「やあだ、まだ居たの？
さっさと帰りなさいよ」
耳に残る嘲りを多分に含んだ悪意ある声に驚き振り返ったヴィクトルは蔑んだ海咲の目の冷たさに息を飲む。
春の様な雰囲気は凍り付き、息をするのさえ辛い凍り付いた雰囲気に背がゾクリとする。
その目に気にせず、絡み付く様な眼差しを向けられたヴィクトルは不愉快だとはっきりと嫌悪を浮かべるが、彼女達は気にしない。
「ねぇ、いい加減気づきなさいよ。
彼が迷惑している事。ねぇヴィクトル？」
瞳に、ハッキリと好意と打算が透けて見え自らの顔が強張る。
イライラしながら、君に言われなくても、海咲と一緒に日本に帰ると言えば、慌てだす彼女を視界に居れるのさえ嫌だと背を向け海咲を胸に抱き込んだ。
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作者名：若桜 | 作成日時：2018年4月2日 20時
