ダンスバトル �� ページ25
暫く壁に寄り、抱き締めていたヴィクトルは気にしなくても良いのに〜と思いつつメイクが付かない様に僅かに顔を離して居る海咲の背を撫でる。
「ぅぅ」
やっと、小さな呻き声が聞こえ、待っているとおずおずと顔を上げた海咲と目が合う。
「あの・・・」
「ごめんね、海咲。
ユリオが聞いてしまったんだろ？」
「ん・・・・」
こくん、と頷いた海咲の目に悲しみが広がり、ヴィクトルも目を伏せて憂い顔になる。
「やっぱり、フィギュアは嫌いかい？」
「ううん、見ているのは好き」
だけど、やるのは嫌いなんじゃなくて怖い、と呟く。
「そっか」
「うん」
幾度も繰り返してきた問い掛けに、ヴィクトルは無理強いはしない。
海咲が怖がる様になったのはヴィクトルが気づかない様に海咲が女の子達の悪意に晒され続けたからだ。
海咲が居るからヴィクトルがフィギュアを続けられていたのに、【ヴィクトルの為に】海咲を排そうとしたのだ。
無論、それに気づいたヤコフが門徒から追放したが、時すでに遅く、すっかりフィギュアをする事を嫌がる様になってしまっていた。
誰よりも軽やかで、楽しそうに滑って居た雪の華の精はもう二度と氷上で舞わない。
守り切れなかった、その事実がとても重く、だからこそ海咲には笑って居て欲しいのに、何時も海咲に甘やかされている。
(あの時、これからは好きな子は絶対守るって誓ったのに)
守られているのは何時も自分で、それが心地良いから気づくのが何時も遅れる。
「あ、ねぇヴィー。
勇利君今度ピチィット君と踊ってるよ」
「ん？あぁ、本当だ」
楽しそう！とすっかり自分で復活している海咲に、あぁしまった、また慰める事が出来なかったと苦笑するが、満面の笑みを向けられ、ヴィクトルはその瞬間嬉しさの余り後悔した事を忘れた。
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作者名：若桜 | 作成日時：2018年4月2日 20時
