あぁ愛しのキキーモラ２【ヴィクトル・ニキフォロフ】 (ページ16)

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袖振り合うページ16

ヴィクトルの腕の中で咲き綻ぶ様子を横目に、知り合いとワインを片手に話して居た彼は、目の前の彼らが海咲の事を話し出し辟易する。

「それにしても、ヴィクトル・ニキフォロフの想い人があんなに小さなladyだとはな」

「２２年か？随分と待ったもんだな」

「あの容姿で２５か、日本人は本当にbaby faceだ」

「あぁ、チャオチャオ。
君なら彼女の事何か知っているんじゃないのか？」

会話に加わって居なかったのに、突然水を向けられチェレスティーノは肩を竦めるだけに留める。

「？何かあったのか？」

「特には」

余り勇利をコーチしている時にも話したりもしなかったと言えば、そう言えば幼馴染だったらしいな、と彼らは勝手に盛り上がり始め、チェレスティーノは此処でもか、と冷めた目で眺める。

幾ら言っても、彼女が悪女だと認めない。
口を噤み、姿を消したかと思えば、まさか世界王者にくっ付いて来るとは恐れ入る。

(勇利の闘争心を萎えさせ、リヴィングレジェンドを氷の上から引き摺り下ろして置いて自覚も無い、か)

たまたま、ヴィクトルは氷の上に舞い戻るつもりの様だが、果たして以前と同じように出来るかは怪しい。

『海咲の為に練習したんだよ♪』

楽し気に話して居る彼の声も聞こえ、チェレスティーノはフィギュアの事を何もわかって居ない彼女に捧げた所で、その偉業の凄さを理解できていないと呆れる。

(恋は盲目だな)

その瞬間、視界の端でモゾリ、と黒い蟲が蠢く様な気配に鼻で分かった。