コミュ障 �� ページ14
ヴィクトルの顔見知りの男性スケーターから始まり、彼らの知り合いの女性スケーターと挨拶を交わした勇利は、皆からヴィクトルの世界歴代最高点の更新おめでとう！と祝福されるが、その横でにこにこと微笑んでいるヴィクトルが怖くて見れない。
「ヴィクトルも、結婚おめでとう」
「ありがとう、やっと彼女を手に入れられたんだよ」
くすくすと笑うヴィクトルは腕の中の海咲の頭にキスを落とすと、彼らは世界一のモテ男がずっと好きな人がいると言ってくれてて本当に良かったと笑う。
「うん？」
「世界中の女性のハートを奪っておきながら
『初恋の人と結婚する』
と全部素気無く断るんだもんなあ」
「俺の彼女も、ヴィクトルのファンなんだぜ」
あはははは！と笑う彼らは、でも本当に幼馴染？と海咲を覗き込む。
「はい」
にっこりと笑う海咲の綺麗な微笑みに、彼らは雪の華の精だと驚く。
華やかなわけではないが、野に咲く愛らしい雪の華。
春の訪れを知らせる白い花の様に、ヴィクトルの瞳の色のドレスを纏い柔らかな日差しの様に笑う海咲に、なるほど、と納得する。
スケーターの求める癒しを体現している海咲は、決して美人ではないが、笑顔が魅力的で手を伸ばしたくなる。
「勇利君、頑張ったもんね」
「う・・・うん」
それを、当たり前の様にヴィクトルの手中の珠から当然の様に向けられる勇利に、同じ日本人だからか？と問いかけた彼らは、勇利も海咲の幼馴染だと聞き驚く。
はにかむ彼に、くすくすと笑う海咲はすぐ振り仰ぎ、ヴィクトルを見つめる。
それに笑いつつ、勇利を揶揄う彼に本当なんだ、と悟る。
「そう言えば、勇利の実家ってオンセンホテルって本当？」
「あ、うん。
田舎町の温泉宿だよ」
その代わり、海が近いから海鮮物が美味しいんだと言えば、数人が『スシ！』と叫ぶ。
「スシ食べに行ったけど、やっぱり日本のスシが一番だよ」
各国の特色は出てて面白いけどね〜と笑う彼らに、ヴィクトルはホントだよね〜と頷く。
「海咲が釣って来たスズキシラス丼、美味しかったよね〜」
「ね〜でも、アラ汁も好き〜」
『釣った！？』と驚く彼らに、勇利は海咲は釣り好きなお爺さんの孫なんだよと紹介する。
海咲のお爺さんが釣りの常宿として、お客で来てくれていたのだと言えば、女性達もその話題に喰いついたのを確認し、ヴィクトルは海咲とそっと人の輪を離れ、もう一度ビュッフェ台に向かった。
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作者名：若桜 | 作成日時：2018年4月2日 20時
