愛しのキキーモラ 13 【ヴィクトル・ニキフォロフ】 (ページ10)

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サムリング　② ページ10

その後も追い掛けて来る記者達を振り切ったヴィクトルは、控室に入り海咲をスツールに降ろした。

「行き成りごめんね、海咲」

ふるふる、と頭を振った海咲の頬についた幾筋もの涙の痕に、俺の想いがやっと伝わった、と喜ぶ。
そこに、JJとユーリも戻って来たが、泣いている海咲の前に跪いているヴィクトルに掴みかかった。

「おいヴィクトル！！
お前５回転飛べるなんて聞いてないぞ！！」

「言ってないからね」

「ヴィクトルって、そんなに長い間彼女を想っているんですか？」

「そうだよ、常々インタヴューでも答えていたと思うけど？」

くすくすと笑う上機嫌な彼にユーリは勇利にも噛み付く。

「カツ丼、お前ヴィクトルが5回転飛べるって知っていたのか？」

「あ～・・・まぁ」

海咲ちゃんの為だよ、と苦笑すればユーリの喉が凍り付く。
だが、その声はヴィクトルには届かない。

「ね、海咲。
俺、また誰にも出来ない事・・・出来るようになったよ」

褒めて？と悪戯っぽく微笑む彼に、海咲は凄過ぎるよ、と抱き着く。

「愛しのヴィチューシュカ。
最高の私の旦那様っ」

「っ」

今まで、二回しか聞いた事がない海咲からの完璧な愛称呼びにヴィクトルは心が震え海咲をきつく抱き締める。

「Я люблю тебя(愛してる)」

そっと、ヴィクトルの耳元に落とされた囁きに、喜色満面で喜ぶ彼に、ユーリは顔を歪めて舌打ちし、JJはロシアの皇帝を溶かした海咲に、絶句した。