サムリング ページ9
海咲との結婚指輪にキスを落とし、自らの右薬指に『一つだけ嵌められた結婚指輪』にもキスを落としてから、すぐさま海咲を抱き上げてくるくると回ったヴィクトルは、顔を必死にフードを押さえて隠す海咲にキスを落としリンクから上がる。
勇利と違って、しっかりと抱き締められて不安定さを感じさせない抱き方をする彼に笑った。
「ヴィーなら、怖くない」
「ん？」
お姫様抱っこ、ヴィーにされたら怖くないと言えば、小さい時から海咲を抱き上げて来たからだよ☆と微笑まれる。
「腕だけで支えられたら怖いって教えてくれたのは海咲だし、俺が抱き上げた事があるのは海咲だけだよ」
それに、安定させるために自分の胸に押し当てる様に抱き上げないと不安定だと知る事が出来たのも海咲のお陰だと頬擦りする。
「ふふ、世界中に海咲を妻だとやっと言えた」
「うん」
まだ、顔も表に出せなくても、俺に海咲という妻を得る事が出来たという事が言えて嬉しいと笑う。
「ごめんね、誤解してて。
ヴィーの心、ちゃんと今度は受け止めたよ。
ヴィーの心はとっても綺麗で、涙が止まらないの」
「いいよ、海咲の涙は綺麗だから。
悲しい涙は駄目だけど、嬉しい涙は美しいから」
泣き顔も可愛いよ、と囁かれ顔を赤くした。
エキシビションを滑り終えた選手と、ヴィクトルが観客に手を振り幕が閉じると、一斉に囲み取材に合ったヴィクトルは『俺だけのキキーモラだからね、取材完全NGだよ★』と制す。
「では、何時出会われたのですか？
勝生選手のコーチの時ですか！？」
「初恋の女性ですか？
それとも別の女性ですか？」
「もしや、勝生選手のコーチ就任に関係されてますか？」
次々に差し出されるマイクに怯える海咲を胸に抱き込み『一切答えないよ』、と真っ黒な笑みを浮かべる。
「彼女、一般人なんだ。
彼女の生活を脅かされるのを俺は望まない」
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作者名：若桜 | 作成日時：2018年3月17日 16時
