♯８ 藍蜻蛉 ページ8
怖い、怖い、怖い………
今、彼を心から求めている。
自然と涙がこぼれ落ちた。
泣き顔をした空を映す水溜まりは、容赦なく私の足を濡らす。
寂しい、寂しい、寂しい……
暗い路地を寂しさが染め抜く。
「…きゃぁっ!!」
急に視点が低くなる。
転んで座り込んだ地面は、湿っていて、とても気持ち良いものではなかった。
その時、頭にひらめいた。
(好き…なんだ……)
結局のこと、彼が…イアルさんのことが好きなんだ。
顔も、性格も、声も、言葉も。
彼の全てが好きなんだ。
私は、思い出したら止まらない自分の癖を呪った。
「イアルさんっ…!!」
私の双眼から、思いの丈がこぼれ落ちる。
灰色の空に喘ぐように彼の名を叫んだ刹那、肩を叩かれた。
「エリン?!」
振り返ると、傘をさした藍色の瞳の彼がいた。
「風邪ひくぞ。 入れよ」
「…はい」
「こんな日になにしてたんだ？」
「…いえ。 何も…」
どうやら、彼の家の近くだったらしい。
人の気配を感じた彼は、表に出て確認したところ、私を見つけたそうだ。
「…冷たいな……」
戸惑うように、私の頬に彼の手の甲が当たる。
人肌より少し熱いような彼の温度が、冷えた私の身に染みる。
「…イアルさん…」
藍色の蜻蛉柄の傘は、彼の瞳の色とよく似ている。
この２ヶ月で、私はすっかりその藍色に染まったような気がする。
(ほら、今も。)
恐る恐る握った手から、藍色が染みてきている。
なんとなく、私たちをつなぐ、いろいろな距離が、ぐっと近くなった気がした。
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冴野(プロフ) - 私もイアエリ好きです！更新頑張って下さい。 (2014年8月16日 1時) (
レス) id: 854f9bbd69 (このIDを非表示/違反報告)
ＸＯＯ - 他のも見てみたいです。（！−！）是非書いてください。 (2013年10月30日 16時) (レス) id: 3cf93702ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：erincha@ | 作成日時：2013年5月3日 9時
