♯２ 特効薬 ページ2
「お元気…でしたか？」
「ああ。そっちは？」
「まだ…あの時の矢傷が痛むことがあります…」
彼女は、"降臨の野"の出来事で背中に矢を受けた。
あの時おれは…
ただ、それを見ていることしか出来なかった。
あれを何度悔いただろうか。
(おれに…何が出来たんだろうな)
「…なぜここに？」
「竪琴の弦が切れたんです。
直せそうにないので、用務長さんに頼んでやってもらおうと考えていて…」
「ちょっと見せてもらえるか？」 彼女の手から竪琴を受け取り、懐から道具を取り出した。
「やりにくくないですか…？」
心配そうに眉根をあげてこっちを見る彼女は、おれの調子を狂わせた。
何せ路地裏でやっているのだ。やりにくいのは当然だろう。
彼女から預かった弦を適当な長さに切り、おれは作業を始めた。
「こんな感じか？」
比較的簡単で、つまらないぐらいだったが、あっという間に終わってしまった。
「あ…問題ないです。ありがとうございました」
彼女ははにかんで、この場を去った。
なぜか彼女は１度振り返り、緩やかな坂を駆けていった。
彼女がいなくなった隣の空間は、隙間風が入り込んだように虚ろだった。
彼女に１度…しかもほんの少しの時間顔を合わせただけなのに、なぜこんなに息苦しいのだろうか。
なぜ彼女を求めてしまうのか。
戸を乱暴に開け、板の間に寝転がった。
窓から差し込んだ光が、長い影を作りだした時、おれは自分の思いに気付いた。
(まさかな……)
今まで何人もの刺客を殺傷したおれが、そんな思いを持つなど、あってはならない。
(忘れろ…!! 忘れるんだ!!)
頭から邪念を振り払い、机に向かった。
滑らかな木肌に指を滑らせると、視覚だけでは分からないことが指先に伝わる。
(随分とここは粗いな…)
縁の部分が妙に粗く、何回か磨いたはずなのに進展がない。
「どうしたものか…？」
明らかに指先の感覚がおかしい。神経がやられたのだろうか。
ざわざわと胸を走る胸騒ぎは、いつしか現実に変化している。
(何でそれに早く気付かなかった!!)
おれの頭の中を閃光のように走った行動が、指先と心への特効薬だろう。
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冴野(プロフ) - 私もイアエリ好きです！更新頑張って下さい。 (2014年8月16日 1時) (
レス) id: 854f9bbd69 (このIDを非表示/違反報告)
ＸＯＯ - 他のも見てみたいです。（！−！）是非書いてください。 (2013年10月30日 16時) (レス) id: 3cf93702ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：erincha@ | 作成日時：2013年5月3日 9時
