淡い恋とずるい二人 ページ27
樹サイド
仕事が終わって、すぐ家に帰って掃除して、Aさんをそわそわしながら待っていた。
「いらっしゃい」
「お邪魔します。
いっちゃん、これこの間話してたわらび餅。
あっさりしたものが食べたいっていってたから鳥の酒蒸しときんぴらにしようかなって思ってるんだけど」
「いいねー」
「まだ夕方だけど作って冷やしておきたいから先にキッチン借りていいかな？」
「ねぇAさん、昨日飲み過ぎた？
なんか様子おかしくない？」
「なんでわかっちゃうの？
私、普通にしてるつもりだったのに「しんどいなら無理しなくていいよ」
「しんどくはない」
「俺ね、いや俺だけじゃないな。
Aさんって表情豊かでコロコロ変わるからついつい見ちゃうんだよね。
みんなそんな素直なAさんが好きなんだよ。
でも今日はなんか心から笑ってない」
「いっちゃん、私ね、ずるいんだよ。
素直なんかじゃないよ」
「何があったか言えるなら聞くし、言いたくないなら聞かないけど、ずるくても一緒にいて。
俺もずるいから核心には触れない。
まだまだ一緒にいたいから」
俯いたAさんを抱き締める。
敏いこの人だ。
俺の好意に気づいて戸惑ってるんだろう。
でもおれだってこの人が少しは特別に思ってくれてるって気づいてる。
前に進めないからまだ言葉にはできないけど、一緒にいたいんだ。
「ねぇお互い様だと思えたらこのままでよくない？」
「いっちゃんはかっこよくて、素敵で若くて「それ以上言うなら口塞ぐよ？
嫌なら黙ってご飯作って」
あっ黙っちゃうんだ。
百面相しながら無言でご飯つくりはじめた。
「今日ね、陣くんのせいで、佐野くん、佐野玲於くんと知り合ったんだけど、なんかすっごい身の程を感じたというかおまえなんかって目で見られた」
「ねぇ今日来るのやめて離れようとか考えた？
今、逃げられたら俺、確実に追っちゃうよ？
余計気持ち高まるやつ。
だからさまだ形にも言葉にもしないで一緒にいようよ」
「みんなとも離れた「あのさ、急に距離とるとか無理だよ？
陣さんのせいって、じゃあ玲於さんに会ったときは颯太もいたんでしょ？
じゃあ颯太がAさんが変だって気づかないわけないじゃん。
てかさAの良さに気づかなくていいよ。
ライバルとかいらないし」
「いっちゃんずるい」
「だからお互い様なら良くない？」
そのままキスをしかけたら受け入れてくれた。
好きとも言わないまま唇を重ねた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 154人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：エリー∞ | 作成日時：2023年3月4日 12時
