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「出来るわけ、ないだろ…?」
Aまでもいなくなってしまったら、僕はきっと、もう立ち上がれない
「ここに残ったら、もう助からないんだぞ!そんなの、そんなの絶対に…!!」
僕がそう叫ぶ間にも火の手はどんどんこちらに迫ってきている。既に屋上の半分近くが炎に包まれていた
「安室くん、もう時間が無い……決断するんだ」
「安室さん…」
赤井の、珍しく気遣うような雰囲気をまとった声と、コナンくんの悲痛な呟きが聞こえてくる
くしゃりと、自分の顔が歪むのを感じた
「…すまない、A」
『ううん、いいんだよ、これで』
辛いはずなのに、怖いはずなのに涙をこらえた下手くそな笑顔でAが呟いた
「今から脱出する!準備はいいな!」
「ああ。坊や、ボールの準備は?」
「OKだよ。…安室さん、本当にいいんだね?」
念を押すかのようにこちらを見るコナンくんに頷き返して、横目でAを見る
やはりしんどいのか、地面に倒れ込んだまま目を閉じていた
「行くぞ、灰原」
再びコナンくんに目線を戻すと、既にバッジに話しかけながら、屋上の端からベルトを投げていた。なぜか下にいるという、灰原哀に渡すことになっている
赤井がサスペンダーを柵に結び付け、コナンくんに手渡す。それを手にしたコナンくんが、柵の上に立つ
「それじゃあ、行くよ…?」
コナンくんが飛び出すのと同時にスルスルとサスペンダーが伸びていく。緊張と、すぐそこまで迫った炎の熱気で、僕の首筋に汗が伝った
「赤井さぁん!大丈夫だよ!」
下を見下ろすと、どんどん膨らむボールの上にコナンくんと灰原哀と阿笠博士が立っていた
「ライ!俺達を置いてけ!俺達はここで死ぬ!」
「ふざけたことを抜かすな…貴様らからはたんまり情報を絞り出させてもらう。降谷くん、先に行っているぞ」
ヴェスパーの腕を雑に掴んだ赤井も、同じように下に降りていく。それを見送ってからジンを持ち上げている風見に声をかけた
「風見、次は君が行け。僕は最後に降りるから」
「は、はい……降谷さん、本当に宮咲さんを置いていかれるおつもりですか?」
「…仕方、ないことだ」
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ゆず(プロフ) - はるさん» コメントありがとうございます!最終話までお楽しみ頂けるように頑張りますのでよろしくお願いします!! (2022年6月4日 22時) (レス) id: f7fb394352 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 見ててワクワクドキドキしてます!!今後の展開がとっても楽しみです!これからも頑張って下さい! (2022年5月31日 1時) (レス) @page2 id: f8ea42caba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆず | 作成日時:2022年5月27日 7時