最後の夜 2 ページ21
.
「ヒョン！俺からヒョンの第一印象言ってみますね」
記憶を遡るのを諦めた私は、先陣を切ったスンオンの言葉に耳を傾けた。
確かに、ジョンウは目つきが鋭くて怖い先輩を彷彿させるような出立ちだったかもしれない。
一人一人が口に出すお互いの第一印象は、今では想像できない彼らの姿を縁取っていて可笑しかった。
すっかり目は覚めてしまい、うつ伏せになって枕を腕に抱えながら皆の笑う姿を見ていた。
「俺はー、Aヒョン！すごいよく覚えてる」
パクハンビンから突然の名指しを受け、私は彼の座る方へと身体を向ける。
自分の持たれた印象は気になるけれど、とても悪かったら嫌かもしれない。ハンビンの続ける言葉に少し緊張して、手に汗を握った。
「あの会場にマシューと入ってきた時、ヒョンの周りだけ別の空間みたいだった。顔は作られた人形みたいで人間味が無くて、線の細さと無感情な瞳があの会場の空気と不釣り合いだった。
皆あの時闘争心剥き出しだったじゃん？だから一層、今にも消えちゃいそうなAヒョンを見て、あの人は何でここにいるんだろうって不思議だった」
うっ、図星かもしれない。
ハンビンの鋭さに嫌な汗を背中にかいた。
物凄くあの時の感情を言い当てられている気がする。確かにあの時の私は、皆のやる気に満ちた空気とは真反対の場所に立っていた。
それに気付いていた人がいることに、私は心苦しく思った。自分の態度が、あの場にいた練習生に対する敬意が足りていないことは自覚していたから。
「ハンビン...よくそんな前のこと覚えてるね」
「だって本当に不思議な存在だったんだもん。やる気は無いように見えるのに、実力は確かだったからそのアンバランスさが変てこだった。
いい人だって色んな人が言ってたけど、本当のAヒョンの感情が見えなくて、ちょっと怖かった。
正直デュアルポジションバトルで同じチームになるまで、ヒョンと話すの緊張してたんだよ」
「緊張していたようには見えないくらい初っ端からしごかれましたけれども」
「そうだっけ？」
心底記憶になさそうなハンビンの表情に、部屋は笑いに包まれた。
寧ろあの時は、スパルタの噂を予々聞いていた私の方が緊張していたと思う。
「でもあのミッションで同じチームになれて、ヒョンのこと知れて良かった。面倒見が良くて、優しくて、手を抜くことを知らなくて、真っ直ぐで。何に緊張してたのか思い出せないくらい、今はヒョンのこと好きだよ」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1090人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ダリア(プロフ) - 更新ありがとうございます！ (3月14日 22時) (
レス) @page25 id: 942cc2825c (このIDを非表示/違反報告)
さえ(プロフ) - 続きが見たいです😭 (12月30日 14時) (レス) @page24 id: 5c6fd2a21e (このIDを非表示/違反報告)
無添加 - 感動してます、本当に更新されてる、、生きててよかった、、、です。 (9月26日 2時) (レス) id: 5066827cbd (このIDを非表示/違反報告)
すいみ(プロフ) - ダリアさん» こちらこそ嬉しいコメントありがとうございます💘この亀更新なのに待っていただけたなんて嬉し過ぎます😭あと少し、最後まで見守っててください✨ (9月17日 23時) (レス) id: 112579e6aa (このIDを非表示/違反報告)
ダリア(プロフ) - 更新ありがとうございます😭ずっと続きが気になっててほんとにありがとうございます😢😢 (9月11日 17時) (レス) id: 942cc2825c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：すいみ | 作成日時：2023年6月16日 23時
