Recollection 1 ページ43
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私が生まれたのは、バンクーバー郊外に位置する自然豊かな街だった。
両親と兄の、4人家族だった。
両親に深い愛情を受けて育った私と双子の兄は、時々喧嘩もするけれど他の同年代の兄弟に比べて仲が良かった。
兄の真似をして習い始めたダンスは思いの外楽しくて、二人でスクールに入り浸っていた。そのうち母の友人の子供だったマシューとも知り合って、兄弟が増えたのかと思うくらい仲良くなった。
ダンスに没頭しすぎて学校の勉強が疎かになったこともあった。中学生で反抗期が来た時に親に怒られたこともあったし、兄と喧嘩して一週間口を書かないこともあった。
それでも、あの地で家族と過ごす平凡な日々に、私の心は満たされていた。
全てが変わったのは6年前の夏だった。
私と兄が無事セカンダリースクールの2年目を終え夏休みに入ると、毎年恒例の家族旅行に出かけることになった。
行き先は年によって様々だった。家族旅行の行き先は外国だったけれど、その時はバンクーバーから少し離れた街を行き先として、そこまでは車で移動することにした。
その年の旅行先を選んだ理由は覚えていないけれど、飛行機より車が好きだった私の要望を父が受け入れてくれたからだったと思う。
夏休みであることも相まって気分の良かった私は、出発の前日は年甲斐もなくはしゃいで遅くまで寝られなかった。
いざ当日になって、準備万端と意気込んで出発した数十分後に、私は家に重大な忘れ物をしたことに気がついた。
私は、いつも使っている枕を荷物に入れ忘れていた。枕なんてホテルのもので充分じゃないかと思うだろうけれど、16歳にもなったくせにあの時の私は枕が変わると寝付きが悪くて眠れない体質だったのだ。
30分ほど車を走らせてしまったけれど、枕を家に取りに帰らせて欲しいと駄々をこねてしまった。
兄に悪態をつかれながら、それでも両親は私のわがままを受け入れ、車を旋回させた。
家に戻る道の途中の、最初の交差点だった。
ルールに厳格な父は、しっかりと青信号になってから車を発進させたはずだ。それなのに、信号無視をしたトラックが左から猛スピードで走ってきて、そのまま私たちの車に追突した。
ぶつかった衝撃で私たちの乗った車は吹き飛ばされ、横転した。その時のことはよく覚えていないけれど、勢いよくぶつけた頭がすごく痛かったことだけ覚えている。兄の呼びかけを耳にしながら意識は遠のいていった。その後のことは記憶に無い。
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すいみ(プロフ) - ぴさん» コメントありがとうございます🫶💕 一気読みして頂けたなんて嬉しい限りです🥰更新頑張ります!! (6月12日 21時) (レス) id: d55745dbd9 (このIDを非表示/違反報告)
ぴ(プロフ) - きゃーーーーー!!てんかいがーーーー!!ハンビンーーーー!!!きゃーーー!ここまで一気見しちゃいましたーーー!!!続きが…早く…気になります…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(語彙力) (6月12日 0時) (レス) @page48 id: d5c63dc535 (このIDを非表示/違反報告)
すいみ(プロフ) - なのこ5546さん» 嬉しいコメントありがとうございます😭💕 とっても励みになります!中々進まないですが見守って頂けたら嬉しいです🫶 (5月23日 22時) (レス) id: 3559a141aa (このIDを非表示/違反報告)
なのこ5546(プロフ) - 最新話の主人公ちゃんがスンと冷え切った感じ最高です!!重すぎないシリアス展開好きなのでワクワクしながら読んじゃいました(笑)更新は大変だと思いますが頑張って下さい!応援しています💓 (5月23日 20時) (レス) @page30 id: 2327b9d39c (このIDを非表示/違反報告)
すいみ(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» 嬉しいコメントありがとうございます🥰ご指摘のところ完全に書き忘れており、最新のはユジン目線です💦お伝えいただき助かりました、ありがとうございます🫧 (5月20日 19時) (レス) id: 3559a141aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すいみ | 作成日時:2023年5月3日 15時