アーティストバトル 8 ページ15
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「なんとなく、違ったらごめんね」
手元の紙に書かれた歌詞を見つめるAの横顔は至って平然だった。本当にただの勘で尋ねてきたような。
それでも彼は俺を見透かしている気がしてならない。
自分の中に留めておきたかったことが自然と口から溢れ出た。
「次の、順位発表式が不安で」
「うん」
「それに、今日嫌な夢見ちゃった。順位を上げるどころか、29位以内に入れなかった」
「うん」
「みんなの背中に追いつこうとするんだけど、足は動かなくなるし、気づいたら周りに誰もいなくなっちゃって。俺一人が暗闇の中に立ってた、それがすごい怖くて」
夢の中で感じた絶望感は、今でも鮮明に覚えている。
手を動かしながら、Aはいつもと変わらない声色で続けた。
「未来のことなんて誰にも分からないから、順位のことは手放しで大丈夫だよ、とは言えないけど」
「...うん」
「口に出しちゃうと言霊になっちゃうからね。悪い夢に囚われちゃダメだよ」
「うん」
「でも、スンオンはひとりじゃないってことは確かだよ。一緒に笑って泣いてくれる人がいるでしょ？スンオンのことが大好きな人は沢山いるんだから、貴方はひとりぼっちなんかじゃない」
普段通りだと思っていた声色は、いつの間にか暖かさを増していて俺の心を柔らかく包み込んだ。この温もりは何故だか母親を思い出させ、意味もなく泣いてしまいそうになる。
「苦しい時泣くのは我慢しなくてもいいんだよ、ヒョンの肩貸してあげる」
まるで俺の心を見透かしたようにAが言葉を紡ぐ。
胸じゃなくて肩なんだ、でも確かにAヒョンの華奢な身体では頼りないもんな、なんて頭の中では茶化しながらも涙は勝手に零れ落ちた。そんな俺を見てAはそっと抱き締める。彼のジャージの肩口が湿っていくのを感じた。
よしよしと言いながらAは背中を優しく叩いてくれるが、この涙は夢のせいじゃなくて、恐怖心から解放された安心感のせいだった。
Aの言葉で、夢のせいで心を覆っていた得体の知れない不安が飛散していったのを感じていた。
「...ヒョン、一個お願い」
「なあに？」
「次携帯使えるようになったら、カトク交換して」
「どうしたのいきなり」
「ヒョン誰とも交換してくれないって聞いたから」
俺の突然のお願いに、Aは拍子抜けたのか「仕方ないなぁ」とあっさり承諾した。
「大好きなスンオンのお願いじゃ断れないよ」
その言葉に俺はまた、涙が溢れたのだった。
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すいみ(プロフ) - ぴさん» コメントありがとうございます🫶💕 一気読みして頂けたなんて嬉しい限りです🥰更新頑張ります！！ (6月12日 21時) (
レス) id: d55745dbd9 (このIDを非表示/違反報告)
ぴ(プロフ) - きゃーーーーー！！てんかいがーーーー！！ハンビンーーーー！！！きゃーーー！ここまで一気見しちゃいましたーーー！！！続きが…早く…気になります…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(語彙力) (6月12日 0時) (レス) @page48 id: d5c63dc535 (このIDを非表示/違反報告)
すいみ(プロフ) - なのこ5546さん» 嬉しいコメントありがとうございます😭💕 とっても励みになります！中々進まないですが見守って頂けたら嬉しいです🫶 (5月23日 22時) (レス) id: 3559a141aa (このIDを非表示/違反報告)
なのこ5546(プロフ) - 最新話の主人公ちゃんがスンと冷え切った感じ最高です！！重すぎないシリアス展開好きなのでワクワクしながら読んじゃいました（笑）更新は大変だと思いますが頑張って下さい！応援しています💓 (5月23日 20時) (レス) @page30 id: 2327b9d39c (このIDを非表示/違反報告)
すいみ(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» 嬉しいコメントありがとうございます🥰ご指摘のところ完全に書き忘れており、最新のはユジン目線です💦お伝えいただき助かりました、ありがとうございます🫧 (5月20日 19時) (レス) id: 3559a141aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すいみ | 作成日時：2023年5月3日 15時
