ep.38 ページ38
.
保健室を出たわたしたちは今、
電車に乗っている。
学校から駅までの道も。
そして今も、手を繋いだまま。
お互い何も言わない。
どこに行くのかもわからない。
けど、それでも小瀧くんの大きな手に
包まれてる感覚は、落ち着くし心地良い。
学校から5駅先の駅で、
小瀧くんに「降りるで」と言われて
一緒に降りる。
小瀧くんに手を引かれながら
15分くらい歩くと、
小高い丘の公園に着いた。
そこにあるベンチに、2人並んで座る。
「……わあ……綺麗……」
街全体を、2人で見下ろしているかのような感覚だ。
今まで見たことのないような景色に、
思わず感嘆の声が零れる。
「嫌なことがあったり思い詰めたときは、
いつもここに来てん。」
そう言う小瀧くんの横顔は、綺麗で。
「小瀧くんの大事な場所に、
わたしがお邪魔しちゃっていいの?」
「もちろん。邪魔なんかやない。
むしろ、Aちゃんと一緒に来れて嬉しい。」
.
そこから2人で少し、街の様子を眺めていると、
小瀧くんが口を開いた。
「……和也さんと、なにかあったん?」
和くん。
名前を聞いただけで、胸がズキンと音を立てる。
「ごめん、Aちゃん。
Aちゃんの家庭のこと、淳太から聞いてもうた。
それと、和也さんのことも少し。」
そっか、淳太先生から聞いたんだ。
「謝らないで、小瀧くん。
別に隠してたわけでもないから。
ねえ、小瀧くん。」
「ん?」
自分の話なんて、本当に信頼してる人にしか
話してこなかった。
でも、なんだか、小瀧くんには
話を聞いてもらいたい。
直感的に、そう思ったんだ。
「わたしの話、聞いてくれる?」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えり | 作成日時：2017年9月19日 22時
