ep.36 ページ36
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「……ん……」
あれ?ここは?
目を開けると白い天井。
「起きたか?」
その声に、上半身を起こして視線を向ける。
そこには、心配そうな顔でわたしを見る
淳太先生がいた。
ここは、保健室……?
「お前、廊下で倒れたんやで。
そいつがここまで運んできてくれた」
……そいつ?
あれ?なんだか右手に温もりを感じる。
「……小瀧くん……?」
そこには、椅子に座ってわたしの右手を握りながら
寝ている小瀧くんの姿が。
ああ、やっぱりあの時聞いた声は
小瀧くんの声だったんだね。
「……小瀧、ずっと心配してたんやで。
Aが消えちゃうんじゃないかって。
小瀧が起きたら、ちゃんと礼を言うんやで」
さてと、俺は書類持ってくるから
熱測っとき。って体温計を渡されて、
淳太先生は保健室を出ていった。
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ピピッ
先生に言われたとおりに熱を測っていると
「……んん…?Aちゃん…?」
右手が少し動いたかと思うと、
小瀧くんが体温計の音で目を覚ましたみたいだった。
「……小瀧くん、わたし……」
「そんな悲しい顔、せんといてや。
Aちゃんが悲しいと、俺も悲しくなってまう。」
そう言ってわたしの頬を撫でる小瀧くん。
ごめんなさいと、ありがとうを伝えたいのに。
言葉よりも、やっぱり涙の方が先に出てしまう。
「泣かんといて。お願いやから……」
壊れ物を扱うかのような、優しい小瀧くんの指先に
また一つ、涙が零れた。
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作者名：えり | 作成日時：2017年9月19日 22時
