ep.29 ページ29
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和くんはこの間言ってくれた通り、
本当にわたし達にコーヒーをサービスしてくれた。
「…悔しいけど、いつも美味しい」
凜ちゃんがぼそっと呟く。
……うん。和くんの淹れてくれるコーヒーは
世界一だよ。胸を張って言える。
「まさかAに、こんな友達ができるとはねえ」
和くんが小瀧くんと流星くんを見ながら、少し不敵に笑う。
「そんなにわたしに友達ができることが不思議?」
「まあね。そこまでAは人に干渉するようなタイプじゃないし。
小さい頃は俺の後ろにばっかいて、ろくに挨拶もできなかったし」
うーん、確かに言われてみればそうだったのかな……
「小さい頃のAちゃんもきっと可愛かったんやろな」って
ふわりと笑う隣の小瀧くん。
なんか、なんというか。
小瀧くんの笑顔を見ると、心があったかくなる。
なんだろうな、この気持ち。
小瀧くんと笑い合っていると、ふと感じる視線。
「……A?今日は俺と帰るでしょ?」
和くんがじっとわたしを見ながら言う。
でも、どうしよう。
今日はわたしが三人を誘ったんだし、
三人と一緒に帰るべきかな?
「うーん、今日は凜ちゃんたちと帰るね。」
「……そ。じゃ、気を付けて」
いつもドライな和くんだけど、
今日はいつにも増してドライだ。
……というより、ちょっと冷たい?
少し怪訝そうな和くんを見てみるけど、
和くんが見ていたのはわたしでも凜ちゃんでも流星くんでもなく、
なぜか小瀧くんだった。
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作者名：えり | 作成日時：2017年9月19日 22時
