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ep.16 ページ16
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「A。帰ろう」
そう言われて、急いでバッグを持って
和くんの後ろをついていく。
車で帰ることもあるけど、今日は
歩いて帰る。
歩きだと、車の時より和くんと一緒に
いられる時間が長いから好きなんだ。
「雨のにおいがする。
もうすぐ春も終わっちゃうね」
そう言うと、そんな匂いするか?と
鼻をスンと啜る和くん。
その姿が柴犬みたいで、なんだか可愛い。
「そういえば今日ね、廊下歩いてたら
キスしそうな人達の姿見ちゃってね。
なんだかわたしの方が恥ずかしくなっちゃったの。」
そんな大胆な奴がいるんだ笑
って笑う和くん。
「お前も、早く彼氏作れよ。
青春なんて、今の内だから」
そう言われて、パッと和くんを見る。
「どうして、そんなこと言うの…」
って小声で言ってみるけど、鼻歌を歌い出した
和くんの耳には届かない。
和くんはわたしの気持ちを知ってか知らずか、
そんなことを言う。
ねえ。わたしは和くんが好きなんだよ。
もう何年も。ずっと。
でも、これを言ってしまったらこの関係が
すぐに壊れてしまいそうで。
和くんと、こんなふうに帰れないなんて。
和くんの隣にいられないなんて。
そんな世界、考えられないから。
ずっと「好き」の一言が言えないわたしは、
とんでもない臆病者だ。
和くんの中で
わたしたちの関係は、永遠に。
「兄と妹」なんだ。
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作者名：えり | 作成日時：2017年9月19日 22時
