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「ありがとう。神童くんのおかげで早く終わったよ」
「いいんだ。…しかし、いつもこれを1人で運んでいるのか？」
植木鉢を全て店内の端へ運び終えた2人は、店頭の軒下で再び会話をしていた。
空はもう暗く、軒先に着いている花屋を象徴するかのようなオシャレな花の形をしたランプが2人の顔を照らし出している。
作業の終わりと同時に、借りていたエプロンは花咲に返され、花咲はそれを手に持ったまま、神童の質問に答える。
「うん、お父さんが足痛めてからは、ずっと。開店前と閉店後に。」
「そうか…しかし、こんなに多いと大変じゃないか？」
「まあね。でも、前だって似たようなことやってたんだからあまり苦じゃないよ！」
そう言いながら笑う花咲。
花咲Aの父親は、この花屋の店主だ。
植物の研究をしていた祖父から影響を受けて花に興味を持ち、大学で経営を学び、祖父のツテもあってわずか20代の時に一国一城の主となった。
そして客としてきた花咲の母親と3年の交際期間を経て、
花咲の姉、そして花咲Aの父となった。
花咲Aの母親は、3年前に病死している。
元々遺伝的に体が弱く、出会った時に客としてきていたのも、当時心臓病を患っていた母親の姉へのお見舞いの花だったらしい。
その後母親の姉は亡くなり、母親自身も、Aが小さい頃に心臓病を患い、長い闘病の末病死した。
神童の脳裏には、小学校6年生の時、一時期長く休んでいた花咲の姿が浮かんでいた。
両親のつながりで、霧野の家族と一緒に、葬儀に参列したのもよく覚えている。
「って待って、もうこんな時間！？外真っ暗…」
「え？…本当だ…」
「大変、ごめんね神童くん、お家の人絶対心配してるよね…」
そう言って眉を下げる花咲。
心做しか顔を青くして語る彼女を見て、神童は安心させるように微笑んだ。
続く
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作者名：エリザベス四世 | 作成日時：2023年6月25日 20時
