【神童拓人】花を咲かせる〜ローダンセを携えて〜【イナGO】 (ページ4)

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あの後、結局話し合いは進まず、練習は再開。

心に少しのモヤを残したまま、部活は時間通り終了し、仕事の終わった神童はサッカー塔の鍵を閉めて、自宅へと向かっていた。

神童の家は、雷門中から徒歩20分ほどで見えてくる大豪邸だ。

近所ではとても有名な邸宅で、"神童邸"と言えばあそこだと、近隣の人は皆一瞬でわかる。

もちろんその家の息子の神童本人もピアノやサッカーのこともあり昔から有名で、その影響力といったら、中学生になった今でも年配の方や、家の近くに住む奥様にはすれ違う度に軽い会釈をされるほどだった。

「あ、神童くん今帰り？」

ふと、サッカー部のこれからに思いを馳せて歩いていた神童に声がかかる。

少し俯いていた顔を上げ、声の方を見るとそこには1人の女がたっていた。

「…花咲」

「神童くんがいるってことはもうそんな時間なんだね。全然気づかなかったや」

そう言ってにこやかに微笑む女…否、少女は、神童の家へと続く曲がり角にお店を構える花屋の娘だった。

花屋、"bloom"。
小綺麗なクリーム色の壁に、水色と白のカーテンが良く似合う建物は、1階が店舗、2階が彼女…花咲 Aの生家であった。

おそらくお店を閉めるための片付けをしていたのだろう、所々土で汚れた彼女は薄いピンク色のエプロンを制服のブラウスとスカートの上から着用している。

そしてその傍らには運ぼうとしていただろう植木鉢が数個置かれていた。