第1章1話〜経験者〜 ページ2
先日、万能坂との試合を終えた雷門中学サッカー部は、ある課題を抱えていた。
「よし、休憩だ！みんな、しっかり水分もとってくれ！」
休憩を意味するホイッスル。
キャプテンである神童が声をかけ、汗まみれ泥まみれになったサッカー少年たちは皆日陰のベンチの方へと歩き出した。
「さっきの俺のドリブル、どうでしたか！？」
「良いと思うぞ！だがお前ならもっと細かい足捌きができるはずだ！より刻んだステップで練習してみるといいかもな」
「ありがとうございます！！」
「そういや今日の5時間目さ〜…」
「浜野くん当てられていましたよね」
「寝てて飛び起きてたな」
万能坂との戦いで皆の思いがひとつになり、勝利への1歩をさらに踏み出した雷門サッカー部。
選手たちは監督である円堂に教えを請い、2、3年生のメンバーは前までの重たい雰囲気とは真逆の、暖かい空気で部活を行うことが出来ていた。
だがここで事件が起きる。
「ごめんなさいっ、スポドリ作るのに時間がかかってしまって、タオルがまだ準備できていなくて…」
「私も、ごめんなさい」
「そうか…気にするな、誰だって最初は初めてなんだ。入ったばかりだしな！これからどんどん慣れていけばいいさ！」
「すみません三国先輩…ありがとうございます」
「ちゅーかそれより、スポドリちょうだい！喉乾いちった！」
「おう！葵、スポドリくれ！」
「あ、はい！水鳥さん！！！みなさんもどうぞ！！」
和気藹々とした雰囲気でまとまって良かった。
そう思えるところだが、2人…
神童と三国は、じっ、とマネージャー達を見ていた。
視線に気づいたマネージャーの1人…空野葵は、恐る恐る神童に声をかける。
「あっ、あの、本当にごめんなさい！早く慣れるようにしますので…」
「いや、すまない！責めているつもりではなかったんだが…俺も三国さんも、そんなつもりじゃないんだ」
「神童の言う通りだ。…空野だけじゃないんだが、マネージャー3人に聞きたいことがあってな。良かったら今聞いてもいいか？」
「はい、大丈夫です！水鳥さんと茜さんも呼んできます！」
そう言って駆けて行った空野が、瀬戸水鳥と山菜茜、そして大量のタオルが入ったカゴを抱えながら戻ってきたのは、走っていってから五分ほどたった頃だった。
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作者名：エリザベス四世 | 作成日時：2023年6月25日 20時
