私は、平穏で静かな高校生活を送りたいお嬢様です 2【安室透／降谷零】

No,91 ページ45

空が青い。安室さんもこの空を見ているだろうか。

「Les enseignants viennent ici.」
　(＿先生、こっちに来て。)

『Qu'est-il arrivé?』
　(＿どうしたの?)

子供たちに手を引かれて連れていかれる。

この国の公用語はフランス語らしい。

あの手紙から数年。

遂に私はボランティア活動の一員として活動する事が決まり、この地に赴き子供たちの生活の一部を援助している。

子供たちはとてもパワフルで私は先生と呼ばれ慕われている。

連れられてやって来たのは子供たちが集う広場で、鍵盤ハーモニカを弾いてくれるという。

実はこの鍵盤ハーモニカを持ち込んだのは私で、ここの人たちは楽器の存在すら知らなかったという。

だから色々な文化に触れて興味を持って欲しいというのが広めたきっかけだ。

だがここは平穏でも、静かな生活を送れる場所でもない。

干ばつ、餓え、紛争、感染

毎年何人もの命が消えていく。



＿未来を紡ぐ事は難しい

けれども子供たちは今この瞬間を懸命に生きている。

明日に夢を抱いて

永遠がある事を信じて

いつ死ぬか分からない状況でも希望を失わないのは、安室さんにも通じるものがあるのではないだろうか。

安室さんと私は守るものの対象が違っても守りたい気持ちは同じだと思う。

子供たちもいつか将来を決める時が来るだろう。

もう既に、ピアノを勉強したい、サッカー選手で活躍したい、医者になって人を助けたいと決めている子もいる。

この子たちは世界中の何処へでも羽ばたく事が出来る。

その中には日本に強い憧れを抱いている子もいる。

＿安室さんが愛して今なお守り続ける日本に。



私の意識が戻ると子供たちは黙ってこちらを見ていた。

きっと意識が他にある事を感じ取って待っていてくれたのだ。この子たちの思いやりの心は才能でもある。

子供たちが弾くのが上達したから聴いて欲しいらしい。

私は勿論聴かせて欲しいと返事する。

そこから始まる演奏。

一人が管に息を吹き込んで出す音に合わせて二重、三重、四重と周りも弾けば一つのメロディとして奏でられる。

こんな風に一人じゃ出来ない事も周りが支え合い、助け合えば一つの作品として完成出来る。一つの音として織りなす事が出来る。




このメロディが子供たちの応援となるように。




安室さんそのものを表しているような青空を見上げる。

一点の曇りもない澄みきった青空に泣きそうになる。








＿お元気で mon chéri





fin

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