私は、平穏で静かな高校生活を送りたいお嬢様です 2【安室透／降谷零】

No,85 ページ39

安室さんと向き合う形でお互いが、お互いを見つめていた。

「髪、切ったんだな」

『...はい、自分に少しでも気合いが入るようにと思って』

「そうか。...短いのも似合ってる。可愛い」


何度言われたか分からない可愛いを、久し振りに言われたので凄く恥ずかしかった。

『ありがとうございます。...今日お仕事は?』

「抜け出してきた」

『...ええ!?何でですか』

「...それを俺に言わせるのか」

安室さんが何故か少し赤くなったのを見て、つられて赤くなる。

『えっと、』

「仕事よりもAの方が大切」


優しく微笑む彼に、泣きそうになるのを我慢した私は偉いと思う。


「Aが決めた事なら俺は応援する。引き留めたい気持ちはやまやまだけどな」


＿引き留めて下さいよ、

そんなの口にしてはいけないと分かってるのであえて笑って返す。

『フランスでも頑張りますね』

「Aならやっていけると思ってる」

励ましの言葉は、きっと私を強くしてくれる。そう信じて。



『安室さん、最後にいいですか?』

「何だ?」

安室さんに目を合わせた後、その逞しい胸板に飛び込んだ。

「おっと...A?」

急に来て驚いてるのだろう。

驚いた表情を見たくて顔を上げる。

『行く前に、充電させて下さい』

「充電?」

『はい』

頷くと背中に腕を回される。

正面から抱き合っては、色んな感情がごちゃごちゃになる。


＿嬉しい、悲しい、寂しい、行きたい、行きたくない、





好き。



好きです、安室さん。


だけど別れにこの感情は必要ない。伝えても迷惑だろう。

それにこの想いはフランスに持っていくと決めたから。




だから、



＿さよなら、安室さん。

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