No,84 ページ38
『送ってくれてありがとう』
ただ今空港にて、私はキャリーケースを引きながら運転手に最後の別れを告げている。
勿論、キャリーケースに荷物全て入るわけがないので先に贈っているものもあるが。
「いえ、送ることが私の役目ですので。__髪の毛、似合ってますよ」
『そう?ありがとう』
私はだいぶ短くなった髪を揺らしながら笑った。
家に一度帰った時、胸元まであった髪を肩につかない位まで切ってもらったのだ。
これは覚悟。
目に見える形で表したかった。
『じゃあ、そろそろ行くわね』
「お気をつけて」
一人空港内に入ると人があちこち行き交っていて、人ごみに飲まれそうになる。
『...はぁ、疲れた』
軽く溜め息をつきながら少し落ち着いた場所を見付けたので近くの椅子に座る。
こうして人が行き交うのを見ていると知り合いが他に居てもおかしくないだろうな。まあ、蘭ちゃんたち以外友達いなかったけど。
『とうとう一人になったな...』
こんなに沢山人がいるのに私は一人。
『...会いたい。』
今思い浮かべるのはただ一人。
安室さんだけ。
でもやっぱり逢いたくない。
逢ったらフランス行きを躊躇いそうになる。
『ここまで来て何考えてんの』
こんな気持ちじゃ、あちらでやっていけないだろうし、何より安室さんがここにいるわけない。
矛盾した感情はどうする事も出来なくて。
時計を見ても時間に余裕はありそうなので売店でも見ようかなと腰を上げて歩き出した、その瞬間。
「...やっと捕まえた」
後ろから抱き締められ、伝わる体温のこの温もりを私は知っている。
『_...安室、さん?』
どうしてここに。
驚いたあまり、疑問の言葉は口に出来なかったが。
「Aがフランスに行くって知って、ここに来た」
『どこでその情報を?』
「...コナン君が」
ああ、コナン君か。
あの子ならしかねない。釘刺しとけば良かったかな。
_なんて、思うけど、
『...離して、下さい』
ここで離れなかったらダメになりそう。きっと日本から_
安室さんから離れたくなくなる。
だからそうなる前に_
「離さない」
低く、でも柔らかな声で抱き止める彼は私の耳元に口を寄せてきた。
「Aがフランスに行く事は止めないよ、応援する」
そう言って私の体を離す安室さんを見て後悔する。
_バカだな私。応援してくれるのに行きたくないなんて。
だが行きたくない理由が目の前の彼にある程に好きなのだと感じる。
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SuiSei - メアリエナさん» コメントありがとうございます!!嬉しいお言葉を頂き恐れ多いです。ここまで読んで下さりありがとうございます。 (2018年8月29日 21時) (レス) id: 67fcc70434 (このIDを非表示/違反報告)
メアリエナ(プロフ) - 思わぬ完結に驚きました。切ないけど、それだけじゃない終わり方、尊敬します。もうちょっとで泣きそうでした(笑) いい作品をありがとうございました。 (2018年8月29日 21時) (レス) id: 1d139961bb (このIDを非表示/違反報告)
SuiSei - *ひな*さん» コメントありがとうございます。正直自分自身、これで良かったのかと思う部分もありましたが、嬉しいコメントを頂き自信が持てました。ここまで読んで下さりありがとうございました。 (2018年8月27日 21時) (レス) id: 67fcc70434 (このIDを非表示/違反報告)
*ひな* - 最後とか切な過ぎて涙だばーっです。ほんとに。あぁ、、、マジ泣けた… (2018年8月27日 14時) (レス) id: 966379f9ef (このIDを非表示/違反報告)
SuiSei - 椿さん» とても嬉しい誉め言葉ありがとうございます!!とても励みになります。これからも更新頑張ります!! (2018年8月19日 18時) (レス) id: 67fcc70434 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SuiSei | 作成日時:2018年8月11日 8時