No,63 ページ17
旋律が部屋の中に、窓の外に広がっていく。
この曲のタイトル
「 映像 」
おばあちゃんはどんな想いでこの曲を弾いていたのか。
どんな映像が流れていたのか。
そこに私もいるのではと考える自分は図々しいのかもしれない。
第一集、第二集と弾きながら、永遠が存在すると信じていた幼き日の映像が流れる。
_おばあちゃん。
何だろう、楽譜が急に見えなくなってきた。
目頭が熱い。
そうか、今泣きそうなのか。
自然と鍵盤に触れる手が止まる。
何も見えない。目の前の楽譜も私の将来も。
今ですら。
「無理しなくていいから」
突然横から伸びてきた腕にすっぽりと収まった私の体。
もしかして、抱き締められてる?
前回の後ろからとは違い、今度は横から。
安室さんの息が耳に直接掛かり、涙が引っ込んでしまった。
「今まで頑張ったな」
安室さんの手が頭に乗せられる。
_今まで頑張ったな。
何か、心にストンと落ちるものがあった。
ああ、これだったのか。私が求めていたものは。
大きな幸せは望まない。小さな幸せを叶えて欲しい。
お金がどれだけあっても、私が欲しかったものはいつだって手に入らなかった。
なのに、今。こうして与えてもらった。
それだけで心が満たされる事に気が付いた。
それともう一つ、気付いた事がある。
何故、お祖父様からの留学の薦めに頷かなかったのか。わざわざ猶予を与えてもらったのか。
答えは明白。
安室さんと、離れたくない。
それが最初の感想だった。
_私、安室さんが好き。
ポアロでいつも目で追っていた事、笑顔がかわいいと思った事、他の女子と話すのを見るだけでモヤモヤする事。
実は気付かない処で行動には現れていた。
『安室さん』
「ん?」
『一時の間、このままでもいいですか...?』
「...ああ」
安室さんが腕に力を込める。
引っ込んだ涙が溢れ出てくる。
私は声を押し殺して泣いた。
安室さん。
おばあちゃん。
_おばあちゃん、おばあちゃん、おばあちゃん。
私はどうすれば、いい?
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SuiSei - メアリエナさん» コメントありがとうございます!!嬉しいお言葉を頂き恐れ多いです。ここまで読んで下さりありがとうございます。 (2018年8月29日 21時) (レス) id: 67fcc70434 (このIDを非表示/違反報告)
メアリエナ(プロフ) - 思わぬ完結に驚きました。切ないけど、それだけじゃない終わり方、尊敬します。もうちょっとで泣きそうでした(笑) いい作品をありがとうございました。 (2018年8月29日 21時) (レス) id: 1d139961bb (このIDを非表示/違反報告)
SuiSei - *ひな*さん» コメントありがとうございます。正直自分自身、これで良かったのかと思う部分もありましたが、嬉しいコメントを頂き自信が持てました。ここまで読んで下さりありがとうございました。 (2018年8月27日 21時) (レス) id: 67fcc70434 (このIDを非表示/違反報告)
*ひな* - 最後とか切な過ぎて涙だばーっです。ほんとに。あぁ、、、マジ泣けた… (2018年8月27日 14時) (レス) id: 966379f9ef (このIDを非表示/違反報告)
SuiSei - 椿さん» とても嬉しい誉め言葉ありがとうございます!!とても励みになります。これからも更新頑張ります!! (2018年8月19日 18時) (レス) id: 67fcc70434 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SuiSei | 作成日時:2018年8月11日 8時