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No,62 ページ16

第一集、第二集を弾き終えた。

皮肉な事に

指が

脚が

私の体全体が、忘れまいとするようにピアノの弾き方を覚えている。

ピアノから奏でられた音は、私を纏う空気の中に馴染んでいくようだった。



「19世紀から20世紀にかけ活躍したクロード・ドビュッシー。彼はフランス出身、だよな?」





この声は。



「安室さん!少しは休めましたか?」

聴きたいと思っていた声が今、私の耳に届く。

「ああ。Aがあの時見付けてくれなかったら重症だったろうな」

『今でも重症ですよ。ここ座って下さい』

別の椅子を引き寄せて、座るよう促した。

「悪いな」

『いえ、お医者さんがお大事にとおっしゃってました』

「そうか、今度お礼しに行かないとな」






_安室さんが隣にいる。

それだけで何だかふわふわした気持ちになる。





『あの、今言う事じゃないと思うんですけど』

「ん?どうした」

『なんで急に呼び捨てにしようと思ったんですか?』




安室さんの家に泊まった時、呼び捨てにしていいか聞かれて、何でそんな事言ったのか気になってたから。





「「さん」を付けるのがめんどくさいから」






あ、そういう理由...

いや、何期待してんだ。





「ところでさっき弾いてた曲、綺麗だった」


『え、あ、りがとうございます』

綺麗、だなんて言うからドキドキしてしまった。




『この曲、私の憧れの人が愛した曲なんです』

「憧れの人?」



『はい。今は亡き祖母で、追い付きたい、私の目標の人で、練習の時はいつも隣にいてくれたんですけど、今は居ないから...あ、すみません。どうでもいい事を』

「...良ければもう一度弾いてくれないか」

『え?』

「Aの言う、憧れの人には代われないけど今は俺が居るから」






どうして、こんなに嬉しい、のに。




悲しい。



『いいんですか?』

「勿論」





私はピアノに向き直り、再び鍵盤に手を置いた。

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設定タグ:名探偵コナン , 安室透 , 降谷零   
作品ジャンル:恋愛
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SuiSei - メアリエナさん» コメントありがとうございます!!嬉しいお言葉を頂き恐れ多いです。ここまで読んで下さりありがとうございます。 (2018年8月29日 21時) (レス) id: 67fcc70434 (このIDを非表示/違反報告)
メアリエナ(プロフ) - 思わぬ完結に驚きました。切ないけど、それだけじゃない終わり方、尊敬します。もうちょっとで泣きそうでした(笑) いい作品をありがとうございました。 (2018年8月29日 21時) (レス) id: 1d139961bb (このIDを非表示/違反報告)
SuiSei - *ひな*さん» コメントありがとうございます。正直自分自身、これで良かったのかと思う部分もありましたが、嬉しいコメントを頂き自信が持てました。ここまで読んで下さりありがとうございました。 (2018年8月27日 21時) (レス) id: 67fcc70434 (このIDを非表示/違反報告)
*ひな* - 最後とか切な過ぎて涙だばーっです。ほんとに。あぁ、、、マジ泣けた… (2018年8月27日 14時) (レス) id: 966379f9ef (このIDを非表示/違反報告)
SuiSei - 椿さん» とても嬉しい誉め言葉ありがとうございます!!とても励みになります。これからも更新頑張ります!! (2018年8月19日 18時) (レス) id: 67fcc70434 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:SuiSei | 作成日時:2018年8月11日 8時

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